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依々恋々 -Another story(under)-

第5章 HOTEL XXX



仕事終わり。
社教センターの駐車場に唯一停まるのは、赤のSUV。
多分、つい先ほど送ったメッセージを確認していたであろうブルー・グレイが前を向く。

乗り込むと、ス、と頬に触れる右手。
「おかえり」
「ただいま。いつもありがとう」
ペコリ、と下げた頭に置かれる温かい手。

「じゃあ、行くか」
「う、はい」
どことなく嬉しそうな顔。
このあとの展開がわかっているだけに、何か企みがあるように見えて仕方ない。
シートベルトがカチリと鳴ったのを確認して、シフトレバーに手をかけるシャンクスが笑う。

「そんなに緊張することないだろ」
「え?き、緊張してるように見える?」
見える、と笑ってくしゃくしゃと髪を乱す手。
かわいい、と細められる目に、キュッとボックススカートを握った。
「腹は?減ってるか?」
「うーん、なんとも分からなくて...」
「そんなに気を張らんでも」
ちょっと困ったように笑う横顔に、うう、と目を閉じる。


「怖いなら、やめとくか?」
ハンドルとシフトレバーから手を離し、少し、座席に凭れるシャンクス。
「無理をさせたいわけじゃない。ただ、ジウと楽しめるならありかな、と思っただけだ」
怖いなら帰ろう、とシフトレバーを握り直した右手を掴む。

「しゃ、社会科見学、だから」

行く、と涙目で見上げるジウ。
うーん、と唸ってハンドルに突っ伏したシャンクスは、よし、となにか決めたような顔で前を見据えた。
「わかった。後で嫌って言うなよ?」
「い、言わないっ」
まずはメシ済ますか、といつもの笑顔を見せたシャンクス。近づいた顔に目を閉じる。
鼻先を擦り合わせる感覚に目を開けると、ごく至近距離で、まずはリラックス、とブルー・グレイが優しく笑った。


「何食いたい?」
今日は芍薬は休みだしなぁ、といつもと同じ声のシャンクスに、ホッとしたジウ。
「気分は...お魚?かな?」
「魚...寿司でも食うか?」
贅沢だね、と目を瞬かせると、決まりな、と姿勢を整えて差し出される右手。
いつものようにその手に左手を重ねると、よし、と握り込まれて、ゆっくりと車は走り出した。
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