依々恋々 -Another story(under)-
第18章 TRAVELER
自宅の最寄りのインターを降りる頃には、ジウは船を漕いでいた。
急ぎの用事は洗濯くらいだろう、とT.O.Gへと向かう。
いつものパーキングに停めると、ジウ、と肩を揺らす。
「んぅ、」
「着いたぞ」
「ぁ、ん、どっち...?」
俺ん家の方、と伝え、ぽやぽやしている頬を撫でる。
「ぁ、買い物、しなきゃ...
冷蔵庫、空っぽ」
お夕飯、と寝ぼけ眼を瞬かせる。
「疲れたろ。
今日はデリバリーで済ませよう」
「ん、いいの?」
あとはゆっくり休め、と車を降りてジウの手を引く。
ごめんね、と少しフラフラしながら歩くジウに、謝るようなことしてないだろ、と苦笑する。
「ん、なんにもしてないし」
「楽しかったか?」
「うん!」
ふにゃ、と笑うジウの髪を撫で、ならいい、とカードを翳す。
エレベータに乗り込むと、いつもなら隣に立つジウが腕に絡みつき、スリスリと額を上腕あたりに擦り付ける。
「楽しかった。
たくさん、調べて準備してくれてありがとう」
「言い出したのはこっちだ」
はちみつの香りの頭頂部にキスをして、抱き寄せる。
「また行こうな」
「うん!」
✜
何頼もうかなぁ、と近辺のデリバリーメニューを探すジウ。
その隣に、最近、よく思い描く様になった影を映す。
「定番のピサ?
あ、この辺りならデリバリーしてくれるレストラン多いんだ...
割としっかり食べる?それか、晩酌程度にする?」
振り返ったジウに、すうっ、と消えたその影に笑みをこぼす。
「どうしたの?」
ご機嫌ね?と不思議そうに首を傾げるジウに、なんでもないさ、と言って一緒に手元を覗き込む。
「店屋物頼むの、随分久しぶりだな」
「常連のお店、ある?」
「あーっと...あ、ここのカツ丼はよく頼んでた」
あとは、と2人で小さな画面を見つめる。
「グリーンカレー、美味しそう」
「お、いいな」
家では作れないタイプのにしよう、とメニューを選ぶ。
「なにか飲む?」
「軽くでいい」
アテになるものあるかなぁ、と探すジウの隣にピタリと座り、悩ましげにする横顔にそっとキスをした。
end