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依々恋々 -Another story(under)-

第18章 TRAVELER



「シャンの匂いだ」

ふふ、と笑うジウ。

「お前なぁ」
呆れ声で腰掛けた膝に頬杖をつくと、まったく、と流し目に隣のジウを見る。
「あら、色男」
誂った笑いでシャンクスの髪に手を伸ばす。

「シャンの髪色って不思議。
 赤ワインで染めたみたいに濃いのに、光が入ると輝いてる」
いいなぁ、と柔らかい癖っ毛の髪を撫で回す。
「もう一回、髪染めてみようかな」
「やめとけよ。黒が似合う。
 ジウの黒髪が好きだ」
もったいない、と毛先を撫でる。

他愛もない話をしながら、浜辺の貝殻を集めたり、波打ち際で少し、海水に触れたりする。

「あっ魚っ」
「うん?あー、ハゼっぽいな」
「小さいエビがいるよっ」
子どもかなぁ?と覗き込むジウの腰を引き寄せる。
「落ちるなよ?」
「そんなにドジじゃないっ」
「その辺、滑りやすいぞ」
あまり端に行くな、と波が穏やかな海を岩場から眺める。

「モビー・ディック市はどの方角だろ?」
「ここから東側じゃねぇか?」

向こう側、とシャンクスが指差す水平線に、船が見える。


「そう言えば、船はどうなったの?」
「ああ、型は決めた。あとは内装と設備だな」
「ほんとに買うんだっ!?」

そりゃあ、と笑う横顔。

「来月、機関士のライセンス取りに行く」
「機関士?」
「船舶免許は船を動かすのに必要な資格。
 機関士は船を安全に管理するために必要な資格だ。
 ともに持ってれば、一人で海に出られる」
「よくわからないけどそうなんだ」
「ジウと俺だけで、港が見えなくなるほど沖まで行けるって事だ」

ふーん?といまいちピンときていないような顔のジウの耳に口元を寄せる。

「誰もいない海原の上で、二人っきりでイチャイチャできるってわけだ」
「んっ!」
スリ、と腰を撫でて囁く。

「えっち!」
「んー?これだってイチャイチャだろ」
抱き寄せたジウに頬擦りする。
「セックスするとは言ってないぞ?
 どうしてもしたいなら、しかたないなぁ」
どこかホテル、と言い出したシャンクスの頬を掴み、てやっ!と振り払った。

「スケベなんだからっ」
「でも好きだろ?」

摘んで引っ張った頬がニヤけているのに気づいて抱き寄せられた胸元に額を擦り付けると、擽ったさにケタケタと笑う声が赤みを増した海辺に溶けていった。
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