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依々恋々 -Another story(under)-

第18章 TRAVELER


「なんか、人、多くなった?」

大きな橋を渡ると、車窓の向こうに車と人が増えてきた。

「そろそろつくな。
 夕日の名所でもあるようだったから、人は多いかもな」
「なるほど」
車停める場所あるかな?と辺りを確認する。
誘導員のいる整備された駐車場に車を停める。

道を渡って堤防と護岸に沿って歩く。

「多分...あ、あの辺りから降りられそう」

塀が途切れた所から続く、坂道。
日が沈むまではまだ時間があるが、天気の良い日で人出は多い。

赤や緑が微かに混ざる砂浜に降りると、ジウはしゃがみこんでそれを掬った。

「本当にガラスだな」
「ね!でも痛くないよ。サラサラしてる」
よほど細かいのだろう。
掬われたガラスの砂は、ジウの白い掌に微かな色付きの影を映す。
「ねえ、シャンの両手で掬って」
こうやって、と言われ、真似してガラス砂を掬い上げたシャンクスに、ちょっと待ってね、とジウは携帯でカメラを起動させた。

「少し、手、窄めて」
お水掬うみたいに、と言われ、こうか?と手の器を作る。
出来上がった形に、なるほど、と笑い、ジウの方へ寄せる。
「いい感じに撮れそうか?」
「うん。そのまま動かないでね」
浅灼けたシャンクスの掌でハート型に溜まるガラス砂の写真に、ジウは満足そうに笑った。


「あ!かわいいっ」
「うおっ!?」
お砂がハート、と二人の間から覗き込むのは、3歳頃の女の子。
びっくりした、と瞬くシャンクスの手に溜まるガラス砂に、触ってもいい?と返事を聞かずに手を伸ばす。

「イリヤッ!もう、すいませんっ」
「ママ!見て!ハート!」
「え?ハート?」
お兄ちゃんのお手々がハート、と母親の手を引いて、シャンクスの手を指差す。
いいなぁ、と眺めるイリヤ。

「こうやって見ろ」
シャンクスの砂を集めた手に、こう?真似をするイリヤ。
「そのままだぞ」
イリヤの手の上に自身の手を持っていくと、行くぞ、とシャンクスは両手を開いた。

キラキラと零れ落ち、あっという間に小さなの掌から溢れかえるガラス。
わぁー!と喜ぶイリヤと母親に別れを告げ、波打ち際まで歩く。

「そろそろ日が傾きだすな」
「どんな感じかなぁ?」

楽しみ、と手を繋いで砂浜を散歩する。
この辺よく見えそう、と適当な岩場を選ぶと、ゆっくりと深呼吸するジウ。
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