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依々恋々 -Another story(under)-

第18章 TRAVELER



「月末になると素うどんしか食わなくなるのに気付いた食堂の姐さんが、たまにこそっとちっさい唐揚げつけてくれたりしてな」
「学食、いいなぁ。
 高校、ずっとお弁当だった」
「弁当あるのいいじゃねぇか」
作ってあるならいいけどさぁ、と駐車場に着いて、車に乗り込む。

「まさか、自分で作ってたのか?」
「そうだよ。
 作ってくれる人、いなかったもん」
彼女の過去や家族を知れるかもしれない、と耳を傾ける。
「慣れるまでは毎朝作るの大変だった。
 毎日お昼代に500円置いてあるんだけど、コンビニで買って行くより、それ貯めてスーパーで安く食材買って作るほうが割いいなって気づいて」
学食なかったし、と言うジウに、高校生でそれに気づくか、とシャンクスは感心した。

「お小遣いは月2,000円だったから、500円を貯めれば平日が21日として10,500円。
 それに2,000円足して12,500円。
 月4週と計算して週の予算は3,000円ちょっと。
 私も、文具買ったりする必要があったから、一食450円で計算してた。
 毎週金曜日に売り出しがあるスーパーに行って、必死に計算しながら食材買うの。
 そんなんやってたら、月末には1,000円いかないくらい残せるようになってきて、次の月はちょっと財布が潤うっていう」
「やりくり上手いなぁ」
「はじめは、ご飯と卵焼きと冷凍食品で終わり!だったのが、レシピ本を本屋さんで立ち読みしたり、図書館で借りたりして作り置きするようになって。
 でも、それもそれで、たまに夜中に帰ってきた両親に食べられちゃってたりしてね。けど、両親にもらったお小遣いで作ったから、文句言えないし」

ジウの料理の腕はそうして培ったものか、と珍しく両親のことも含めた話を饒舌に話す手を握る。

「その経験による腕でがっつり胃、掴まれた訳だな」
「え?ああ、掴まれてるの?」
「そりゃ、もうしっかりと」
知らなかったのか?と聞かれ、初耳ですよ、と笑う。

「「あっ」」
2人揃った声。

「敬語、」
「っシャン、前に『アレは時効』って言った!」
そうだっけか?と惚けながら顔を寄せる。
「さっき、ちゅーしたでしょ!」
「頬じゃねえか」
「どこにしようが、キスはキス!」
ちえ、と舌打ちし、まあいつでもできるしな、と車のエンジンをかけた。

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