依々恋々 -Another story(under)-
第18章 TRAVELER
ここ、とジウの携帯の画面を覗き込む。
「『ガラスの砂浜』?」
「すぐそこではないんだけど、多分、帰り道の途中で」
確かに、と案内地図を開く。
「今からの時間なら、ちょうどサンセットに間に合わないかな、って思ってるんだけど」
ダメかな、と不安げに見上げるジウの髪を撫でる。
「ダメな理由が無い。
そうだな。気になったところに寄りつつ、向かってみるか」
少し気になって調べてみると、水質改善のために、廃ガラスによって作られた人工浜だとある。本物のガラスなのか、と駐車場に戻りつつ辺りを散策する。
「砂みたいに細かくしたガラスだから、歩いても平気なんだって」
「波打ち際まで入れそうなら行ってみるか」
「うんっ」
別の区画の庭の、サルビアの真紅、ホテイアオイの透ける紫、柔らかそうな千日紅のピンクや白に喜ぶジウ。
「センニチコウって、セーターやニット帽についてる毛糸のポンポンに似てると思わない?」
確かに、と笑い合う。
「昔、バギーが気に入って被ってた帽子にもついてたな」
赤の丸帽子、と懐かしそうにする。
「アイツ、ガキの頃から全然変わってねぇもんなぁ」
そうなの?と見上げる。
「ほら、芍薬で会ったろ?
ああしてゆっくり話したのは...15年ぶりか?」
「っそうなのっ!?」
そう言えば、15歳で育った施設を出たと言っていた、と思い出す。
「仕事はメールのやりとりだけだったからな」
「高校、違った?」
「俺は私立に推薦で入って、バギーは『彼女作りたい』って公立に行った」
「そんな理由っ?!」
「そんなもんだって。高校選びなんか」
懐かしそうに笑うシャンクス。
「中学出たらハウスにはいられなかったからな。
高校選びの基準は、まず寮があること。
それから校則でバイト可の高校ってのが最優先事項だった」
「偏差値とかじゃなかったんだ」
まったく考えてなかった、と首を振る。
「学費と寮費は免除されたが、支給される生活費と小遣いは本当に最低限で...
やれ、洋服だの文具だの、資金繰りに頭悩ましてた記憶の方が残ってる。
参考書でも買おうもんなら学食で定食も食えなくなって、次の支給日まで1杯150円の素うどんで凌ぐんだ」
想像よりも壮絶な学生時代だったんじゃ、と驚くジウに、それでも楽しかったぞ、と懐かしい記憶を思い返した。