依々恋々 -Another story(under)-
第18章 TRAVELER
店を出て敷地の散策を再開する。
建物内のショップに立ち寄ると、ジウは紅茶葉の陳列棚の前で立ち止まった。
「アールグレイかアッサムか...
イングリッシュブレックファーストも捨てがたい...」
イギリスの紅茶メーカーの茶葉は花や鳥が描かれた洒落た缶に入っていて、ジウ好みのパッケージだな、とジウの腰を軽く引き寄せた。
「紅茶は、サナと分けるからこれにしよ」
ちょっと奮発しちゃえ、といくつかのフレーバーのティーバッグがコレクションされた箱を選ぶ。
店内をぐるりと見て、あとはコレ、と1つのキャニスター缶を手に取った。
「それも紅茶か?」
「ううん。ホットチョコレート」
コレはね、と嬉しそうに顔を上げる。
「シャンにお礼。
チョコレート、好きでしょ?」
たくさん準備してくれたから、と少し恥ずかしそうに笑う。
「それに、いつもシャンは出張や外出があるとお土産買ってきてくれるでしょう。
私は、遠方出張もないし、そんなに遠出することもないから、なかなかお土産を渡すってきっかけって無いし」
帰ったら渡すね、と嬉しそうに笑う。
会計に向かおうとジウが抱えている商品へ手を伸ばすと、ダメ、と背を向ける。
「払う気でしょ」
「別に土産物くらい、」
「お宿も食事も、全部シャンが払ってる。
お土産はダメ。私のだもん。私が払う」
あっちに行ってて、と言われ、そういうところは頑固なのを知っているので、わかった、と引き下がった。
会計が終わった頃を計らって、嵩張ってしまう手提げ袋を取り上げる。
「少しは甘えとけよ」
「充分甘えてる」
ラインが低いなぁ、と苦笑し、庭から建物が続く通りを歩く。
「目的のもんは済んだわけだが、他に行きたいところは?」
予定していたものは完遂済み、と伝える。
アフタヌーンティーって本当は今からよね、とお昼すぎを指す時計に苦笑いするジウ。
「あのね、ちょっと行ってみたいところがあって」
いい?と手を取って見上げてくるジウに、キスしてくれたらな、と頬を寄せる。
「しかたないなぁ」
てっきり断られると思ったのに、ジウの柔らかい唇が一瞬、頬にしっかりと触れた。