依々恋々 -Another story(under)-
第18章 TRAVELER
✜
(あったかい)
ぼんやりと目を開けると目の前には浅灼けた素肌。
ゆっくりと上下している厚い胸板から目線を上げると、ブルー・グレイを隠す瞼を縁取る睫毛。
(こうやってみると、結構長い)
あどけないなぁ、と寝顔を見つめる。
(こんな顔しといて急に色気出してくるもんなぁ)
誂うためにわざとやっている時もあるようだが、不意打ちで食らった時の衝撃を思い、ずるいなぁ、と輪郭を撫でる。
ん、と僅かに開いた瞼に、起こしちゃった?と手を引っ込める。
もぞ、と布団に潜り込むと、腰に腕を回して抱きつき、んう〜、と胸元に顔を埋めた。
再び寝息が聞こえたかと思うと、やべっ!と勢いよく起き上がった。
「っ何時だっ!?」
「えっ、えっと、今7時18分...」
18分、と確認して、うあー、と布団に倒れ込む。
「寝過ごしたかと思った...」
よかった、と腕を目元に乗せる。
「時間制約のある予定があるの?」
「ああ、そうだ。ジウに話してなかったな」
ごろりと寝返り、今日はな、と言う。
「昨日は『和』だったからな。
今日は『洋』だ」
洋...?と首を傾げるジウに、楽しみにしてろ、とにっかりと笑って起き上がった。
✜
昨日と同じセンターラインパンツとスタンドアップカラーのワイシャツにジレを羽織る。
「ちょっとフォーマルな方がいい?」
パールの飾りがついたペプラムブラウス、フレアのワイドパンツというコーデのジウが、不安げに聞く。
「充分だろ。特にドレスコードはないはずだ」
あ、いや?一応あるのか?と悩み出すシャンクス。
どこに行くの?と尋ねるジウに少し悩んで、内緒、と人差し指を立てる。
「ドレスコードかある所にサプライズ訪問は無しよ」
一体どうしたら、と呆れるジウの服をもう一度確認して、問題ない、と頷く。
「正式に格式に則って、というよりは、気軽な感じだったから大丈夫だろ」
「不安だなぁ」
お願いしますよ、と持参したチャンキーヒールのパンプスに足を入れる。
大丈夫、大丈夫、!とあっけらかんと笑ってスニーカーを履いたシャンクスに手を引かれる。
「本当にどこに行くの?」
「お楽しみだって言ったろ?」
行き先や目的を教えてくれないシャンクスにもう、と嘆息して車に乗り込んだ。