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依々恋々 -Another story(under)-

第18章 TRAVELER



 ✜

「ほら」
パクリとれんこんを運んだ箸を咥えたまま首を傾げる。
ん、と再び揺らされる盃に、箸を置いて徳利を持ち上げた。

「違う、違う」
おかしそうに笑ったシャンクスは、ジウの手から徳利を取り上げ、代わりに盃を持たせた。
「私っ焼酎飲めない!」
「これは清酒だ」
「もっと飲めないよ」
「焼酎より度数低いぞ」
銘柄の説明の紙には16度とある。
いつも彼が好んで飲む焼酎は、確か25度と書かれていたはずだ。

ん、と突き出される徳利に、おずおずと盃を差し出す。
「ちょっとだけ!」
「盃一杯なんか、舐めるようなもんだろ」
盃の半ばまで注がれた清酒を、いただきます、とほんの少し本当に舐めるように飲んだ。

「っピリッピリする!」
ひゃあっと震えるジウにケタケタ笑うと、盃を取り上げて残りを飲み干すシャンクス。
「む、むり。辛いっ」
舌が痛いっ!と水を一気飲みする。
「お子ちゃまだな」
クツクツとおかしそうに笑うシャンクスに、シャンだって!と言い返す。
「チョコレート大好きなくせにっ」
「別にチョコレートは子どものものじゃないだろ」
飲みやすい方なんだけどなぁ、と徳利から盃に移す。

二合の酒が空になる頃には互いの料理も片付いていて、よく冷えたメロンとオレンジを美味しそうに食べるジウに、自分の皿から一切れ分け与える。
「いいの?」
ああ、と頷くと、ありがとう、と笑った顔を肴に最後の酒を煽る。

 ✜

下膳と寝床の支度を仲居に任せ、腹ごなしに旅館近辺を散策する。

「あ、猫ちゃん」
野良か住み着いているのか。金眼の黒猫を緑眼のきじ猫が毛繕いしている。
繋いでいた手を離し、猫から少し離れて屈むジウをジロリと猫が見た。

「触らせてくれる?」

通じるはずのないジウの言葉に猫たちは、仕方ないなぁ、というようにのそのそ歩いてきて、ジウのすぐ隣に寝転んだ。
「優しいねぇ」
首輪をしていないが顔も毛並みも綺麗な猫。
「近くで世話されてるのかもしれねぇな」
猫を挟んで屈んだシャンクスがきじ猫に手を伸ばすと、スッと立ち上がり、ジウの反対側へと移動した。
チラ、とシャンクスを見て、ンナァ、と鳴くと、黒猫を撫でていたジウの手に額をぶつける。

「シャン、ふられんぼ」

クスクスとジウが笑った。

 ✜
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