依々恋々 -Another story(under)-
第18章 TRAVELER
(どうしろってんだよ)
浴衣の袷に額を擦り付けるジウの髪を撫でる。
部屋に戻ると、ちょこんと隣に座ったジウ。
くっついてもいい?と浴衣の袂を引かれ、迎え入れた腕の中に擦り寄ってきた。
いつもよりも密着するように抱き合う。
こうなれば食事よりもジウを、などと低俗な事を考えていたら、食事の時間になってしまい、そちらはお預けを食らうこととなった。
選んだ食材を入れる籠を手に草履を履くジウ。
(なんか、いつもより)
違和感に手を握って気づく。
「ヒールか」
「ヒールが?」
なに?と見上げる視線。
「いや、なんかいつもより可愛い気がしてな」
「え?そ、そう?」
風呂上がりの熱は引いたはずの頬が熱い。
「やっぱり、ジウはかわいいな」
浴衣もよく似合う、と言って手を引くシャンクスに、燻っていた気持ちが落ち着く。
(単純だなぁ)
繋ぐ手をぎゅっと握ると、心地よく握り返してくれる大きな掌に、半歩、身を寄せた。
✜
「あ」
「ん?」
蒸し場についてしばらくすると、やってきたのは浴室でシャンクスの噂をしていた二人組。
なんでもない、と食材の詰まった蒸籠の様子を窺う。
ちらちらとこちらを伺う目線に、じっと目を伏せているとトン、と背中にあたる体温。
そろそろ蒸し上がるか?と蒸籠の様子を窺うシャンクスを見上げると、柔らかく笑みを浮かべて頷いた。
「お、ほら。いい感じだろ」
熱っち、と蒸し上がった蒸籠を岡持に入れて、蒸したての野菜を摘む。
「はっ、うまいな」
フー、と吐息で冷まし、ほら、と指先でつまみ食い用、とにんじんを差し出す。
手をもらいかけたのをやめ、指先に直接口元を寄せる。
「っ柔らかいっ」
「うまいだろ?」
はふはふ言いながら、コクコクと頷くジウ。
「やけど、しそうっ」
「ハハッ、もう少し冷ましてやりゃよかったな」
部屋でゆっくり食おう、と蒸籠を入れた岡持ちを持つ。
彼女らの後を過ぎる時、にわかに向けられた目線を受け流し、日本酒と焼酎ならどっちか合うと思う?と聞くシャンクスの片腕に、飲み過ぎちゃダメよ?とそっと腕を絡めた。