• テキストサイズ

依々恋々 -Another story(under)-

第18章 TRAVELER



 ✜

(やばっ!ゆっくりしすぎちゃった)

香りのいいお湯にのんびりしていたらいつの間にか時間が経っていて、シャンクスを待たせているだろうと慌てて浴衣を着込む。

「えっと、右手で裾が掴めるように重ねて...」
基本の着方、と書かれた一枚紙を参考に浴衣を着付け、紐で留めて形を整えたあと、ベルト式の帯に片蝶流しの作り帯を取り付ける。
「割と本格的!」
本当にちゃんと着てるみたい!と姿見で確認する。

鏡台に置かれたドライヤーで乾かした髪に、持ち込んた髪飾りを付ける。
透明なカメリアの花びらに煌めく小さなスワロフスキーに、悪くない、と頷く。

入れ替わるように入ってきた二人組の女性。
「かっこよかったね」
「上がった時もいたら、声かける?」
「いや、絶対彼女連れだって!」
「わかんないよ?ひとり旅かもよ?」
キャッキャして服を脱ぐ。
「あの赤い髪、地毛かな?」
「背、高かったよね?ていうか、脚長かった!」
「ちょっとヤバい雰囲気あったけどね」
あの目の傷、と自身の左目を差す女性に、鏡の中の自分と早々におさらばし、早足に浴場を出た。

覗いた待合に、白地に紺の浴衣を着て携帯に視線を落としている赤い髪を見つけ、しばらく影から眺める。
近くを通り過ぎる女性客や仲居が、少し視線を残していくのを見て、んん~っ、と小さく唸る。

(早くお部屋に戻ろっ!)
「シャンっ!ごめん、待たせちゃった」
いつもより少し近くまで寄り、ピタリと身体を付けて隣に掛ける。
浴衣を借りたことを早口に伝え、少しは周りから彼を隠せるかも、と柄を見せるように袂を広げる。

携帯を手に持ったまま動かないシャンクスに、あ、と目線を下げる。
「似合わない?」
「っそんなことねぇ!」
かわいい、と笑うシャンクスに安心する。

彼が好きだと言った香りのシャンプーを使ったことを話しながら、ちゃんと恋人に見えるかな?、と不安が募る。

話を聞くシャンクスの反応に、首を傾げた。
どこか、心此処にあらず、という気がして、問いかける。

「湯あたりでもした?」

もしかして、温度が高すぎたとか成分が合わなかったとかで本調子でないのだろうか、と座高も高い顔を覗き込む。
/ 136ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp