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依々恋々 -Another story(under)-

第18章 TRAVELER


部屋風呂は後でゆっくり入るか、と温泉まんじゅうを分けて食べ、大浴場で一日の汗を流し、待合に置かれた籐編みの椅子でジウを待つ。

部屋の浴衣は気持ち丈が短いが問題ない程度だった。

今のうちに、と簡単な仕事作業を携帯でしていたら、シャン、と呼ばれて顔を上げる。

「ごめん、待たせちゃった」

湯上がりで頬を紅潮させたジウの姿に固まる。

乾かした髪を纏め、着ている浴衣には自身の白地に紺柄のものとは違う、濃紅の大輪花が咲き誇っている。

あのね、と嬉しそうに袂を広げて話し始めた。


「お風呂場でお話してくれたお姉さんが教えてくれたの。
 フロントに声をかけたら、女性限定で浴衣借りれるサービスがあるって!
 ちょっと早めに上がって、借りてきちゃった」
帯結べないから簡単な付帯だけど、と言って、どう?と微笑む。


浴衣の絵柄に映える黒髪が、毛先まで纏められた事により露わになっている項や慣れない浴衣に少しぎこちない動きに掻き立てられる。

「似合わない?」
無言のシャンクスを不安げに見るジウに、そんなことねぇ、と食い気味に返す。
よかった、と言って、バスグッズが入ったバックからボトルを出す。

「ちゃんとシャンプー、いつものやつ持ってきたんだから」

ちゃんとヘアオイルもしたよ、と言うジウの黒髪は確かにいつもの蜂蜜の香りで、これは、と椅子にかけ直す。

(想像より破壊力あるな)
浴衣が似合うだろうな、とは思っていた。
予約時に浴衣のレンタルがあるか書いていたかなんてもう覚えていない。
紹介の写真でモデルが着ていた、自分の浴衣と同じ絵柄でも充分雰囲気はある。

よく見ると、浴衣に合わせて結い方を変えた髪には、自分が贈った髪飾りがつけられていて、爽やかな雰囲気の中の確かな色香を感じ取り、落ち着かなくなる。


(いやいやいや)
ダメだ、と目を瞑る。

明日はイングリッシュガーデンに連れて行ってやるんだろう、とゆっくり息を吐く。

今日だってさんざん連れ回した。
温泉で癒されてゆっくり休ませてやらないと、と自制する。

今夜はちゃんと休ませてやるべきだ、とわずかに疼き出すソレに(最悪自涜に耽るか)と、湧き出る俗欲を、湯当たりした?と不安そうに見てくるジウに、ちょっとな、と笑ってごまかした。
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