依々恋々 -Another story(under)-
第18章 TRAVELER
✜
通された部屋の広さに驚いていると、部屋の最奥の設備になお、驚く。
「お風呂、ひろーい!」
柔らかそうな湯が滾々と湧き出ている檜の風呂に、いい香り、と楽しそうな🌸。
案内係の仲居が説明を始めた。
「夕食はお部屋にお支度させていただきます。
地獄蒸しの懐石となっておりますので、お時間の15分ほど前に建物出て右手の調理場へお越しください。
歩いて頂いて1分とかからず着きますので。
その際、こちらの部屋札お持ち頂きますようお願いします」
部屋名の書かれた木札を預かり、各設備や注意事項の説明を受けた後に二人きりになる。
部屋の設備を見尽くし、最後に見る床の間の掛け軸に首を傾げている🌸に背後から抱きつき、腰に手を回す。
「感想は?」
「修学旅行みたい!」
予想外の回答に、ふは、と笑う。
「ホテルは泊まったことあるけど、旅館なんて高校の修学旅行以来」
そうなのか?と低い位置の頭を見下ろす。
「疲れてないか?
結構連れ回したからな」
「シャンこそ。
長距離の運転、大変だったでしょう」
労り合うようにどちらからともなくキスをする。
「明日、少し早い時間から動くがいいか?」
うん、と頷く。
「何時くらい?」
「8時には出たいな。
あ、朝飯、出てから食う予定だからな」
「ここじゃなくて?」
「ああ、行きたいところがある」
詳細は内緒、といたずらっぽく笑うシャンクス。
「旅行プロデュース力、高すぎない?」
そうか?と笑って厚い座布団が置かれた座椅子にあぐらをかく。
「🌸と見たいもんややりたいこと、詰め込んでるだけだ」
何も特別なことはしてない、と言う向かいに座る。
「なんだ、惚れ直したか?」
ニヤリ、と笑う顔に、うん、とにっこり笑う。
座卓に突っ伏すシャンクス。
「えっなに?」
(かわいいんだよ、くっそ)
背を丸め、悶える。
「やっぱり疲れたよね」
ありがとう、と運転に疲れたのだと勘違いした🌸が隣に座ったので、ごろりとその膝に寝転んで甘え寄った。