依々恋々 -Another story(under)-
第18章 TRAVELER
配られた水無月を美味しそうに食べるジウ。
お茶を運んできた係員が、お作法は?とにこやかに問う。
「私、何も知らなくて」
不安そうにするジウの前に、では、と茶碗が置かれた。
「同席者がいる場合は、まず、お隣の方に『お先に頂きます』という意味で『お先に』と声掛けされてください」
はい、と素直に頷いたジウは、お先に、とシャンクスに会釈する。
「それから、お茶を点てた人に感謝を述べます。
お点前頂戴します、と言い、お茶碗を立ち上げて軽く掲げましょう」
丁寧に指導する係員に素直に倣うジウに、可愛なぁ、と笑みを零す。
ゆっくりされてください、と茶道具を片付けた係員。
シャンクスは足を崩して座り、ジウは開けられたガラス戸から庭を眺める。
草木が美しい庭先に来た小鳥を見て微笑んでいるジウ。
「奥方様ですか?」
可愛らしい方ですね、と言った係員に、少し間をおいて、ああ、と頷く。
「茶道にご興味を持っていただけて嬉しいです。
また、ぜひお越しください」
「伝えておく」
飛び立った小鳥を笑顔で見送るジウ。
小さく手を振る姿に、ふっとシャンクスは笑った。
✜
「ありがとうございました」
またお越しください、とにこやかに送り出され、ジウの手を取る。
「温泉街の方に向かうか」
15分程度でつくな、とナビを頼りに車を走らせた。
手近なパーキングに車を駐め、温泉街の案内板を見ながら話していると、あ、とジウが指差す。
「足湯、すぐそこだよ」
この先、と道の向こうを指す。
車からタオルだけ持ち出して、温泉街の中央に向かう。
「わあ!」
もうもうと立ち込める湯気。
「長いっ」
流れる湯川の川緑には、点々とベンチが設置されている。
その1つに腰掛け、ジウはサンダルを脱いだ。
「あったかーい!」
川なのに、と楽しそうに湯の中を歩く。
「あ、ちょっと熱くなった」
「上流の方が源泉に近いから、熱くなるぞ」
なるほど、と程よい場所を見つけたジウの隣に腰掛け、湯気立つ川に足をつける。
「気持ちいいなぁ」
「ね!」
シャツワンピースの裾を捲り、極楽〜、と白い足をつけてほころんだ笑顔のジウ。
シャンクスの反対側の向かいに、男が掛けた。