第1章 Hands
side.研磨
「……研磨…怒ってない?」
「えっ?」
意外な言葉に驚いた。
確かにさっきまで怒ってたけど、
もう…
「怒ってないよ」
「…ごめん」
「いいよ。俺も悪かったし」
「ありがとう」
「うん。ご飯、食べよう?」
名前はベッドからごそごそと出てきた。
きっと泣いていたんだと思う。
俺が何も言わず、部屋から追い出したから。
あーあ。
なんか泣きそう。
幼馴染じゃなければ、
もっと違う出会い方をしてれば、
名前のことを知らずに済んだのに。
俺は名前に手を差し出す。
当たり前のようにこの手をとる名前。
ほらね。
喧嘩してもこうやって手を握れば、
仲直りなんだ。
「母さん、待ってるよ」
「うん」
俺は名前の手を引いて、リビングに下りた。