第3章 Love
side.名前
夕飯の支度を手伝っていると、玄関のドアが閉じる音がした。
きっと研磨だ。
「研磨。おかえり」
「…………ただいま…」
あれ?
何で視線を合わせようとしないの?
もしかして避けられてる?
顔を背けて部屋に行こうとする研磨。
私は咄嗟にその手を掴んだ。
「研磨。待って」
「…何?」
何?
その態度。
私、怒らせるようなことした?
覚えがないんだけど。
「何で私の顔見ないの?」
「…名前には………関係ないっ!」
掴んだ手を思いっきり振り払われて、呆然とする。
こんな風に拒絶されたのは初めて。
何で?
何か悪いことした?
私のこと嫌いになった?
研磨は私から逃げるように、自分の部屋に行ってしまった。
私はその場に立ち尽くして、振り払われた手を摩る。
泣きそうになるのを堪えて、おばさんのいるリビングへ戻った。