第1章 山田利吉の場合。
その日の夜。酷く寒く雪が降っていた。
利吉は城の屋根に座り月を見ていた。
朝に城主に怒られてから城直属の忍者が利吉を見張っているのだ。
利吉はそれに気付かないふりをして、自分の部屋に戻っていこうとしていた。
「可哀想よねえ…尾形様…酷く落ち込んでいらっしゃったわ。」
「そうねぇ…。唯一利吉さんが尾形様と歳が近いですもの。ご友人を失った感じよね…」
部屋に戻る途中。使用人の声が聞こえ思わず足を止めた。
確かにこの城は利吉と尾形以外歳が近そうな人は見当たらなかった。
しかし、友達になった覚えは無い。