【R18】呪術廻戦 〜生かすための縛り・死ぬための縛り〜
第1章 全てのはじまり
母「コホッ、ケホッ…… 陽菜乃、ごめんね、、、お母さんはもう…」
陽菜乃「っ…やだよ、お母さん……おかあさぁぁぁん!!!」
あの日、私は誰かと話をした記憶はあったけれど、それが一体誰なのか。どんな話をしたのかは覚えておらず縁側で寝ていたらしい。
そしてその日から3か月後、木枯らしが吹き始めた冬の夜、母がこの世を去った。
禪院家では異例な程、簡素な通夜と葬式だった。
この時、唯一母屋にある座敷に入る事を許された。
禪院家頭首、五条家頭首、加茂家頭首とその息子や嫁、僅かな分家の者達が顔を出し私を横目に見ながら話をしている姿を今でも覚えている。
宿儺……その名前だけが私が唯一知る事ができた。
母が何らかの縛りを設け身重の母と私を逃してくれたと聞いた。
でも、その理由だけは母は語る事はなかった。
十五の年を迎えた孤月の夜……
私をここから救い出してくれる唯一無二の存在。
それが例え今よりも絶望であろうと私はもうどうでも良かった。
10年後ーーー
あれから10年が経った。
相変わらず私に呪術云々の教育は一切施されず女中として屋敷の掃除や洗濯、食事の準備をする生活。
母と暮らした部屋と縁側だけが唯一心が休まる場所だ。
「明日で15歳か……」
孤月の夜とは一体いつなんだろう?
今晩は雨が降りそうで所々に雲がかかっている。
夕焼けの差し込む反対側の空に薄っすらと細い三日月が顔を出してはいるものの、日が完全に沈んだ後はきっと雨粒が軋んだ縁側の板を濡らすだろうと思いながら襖を閉め薄い茶を湯呑みに入れすすっていた。
気付いた時には日付けを跨ぎ、閉めた襖からは薄暗い月明かりが差し込んでいた。
陽菜乃「……ん、寝ちゃってたんだ」
湯呑みにはあと一口で飲み干せる程の茶が冷たくなって月明かりに照らされていた。
陽菜乃「雨、降らなかったんだ…」
ふと冷たい夜風を頬に感じ見てみると閉めたはずの襖が開いているのに気付く。
「起きたか……」
暗闇と同化し、一切の気配を晒さなかった存在が声を発する。
聞いた事のない…いや、どこかで聞いた声がゆっくりと月明かりに照らされる。
「迎えに来た…ケヒッ」