【R18】呪術廻戦 〜生かすための縛り・死ぬための縛り〜
第1章 全てのはじまり
小さな部屋に唯一ある縁側には少しだが庭が設けられている。
だが、手入れはされておらずどこからか飛んできた雑草の草花と一本の柿の木がそびえているだけの3畳にも満たない小さな庭だった。
それでも唯一外を見渡せる空間に陽菜乃にとって心が落ち着く場所であった。
陽菜乃「わあ!青い花が咲いてる!!綺麗…」
名前も知らぬ青く花弁の丸い花を庭の木陰で見つけ思わず独り言を呟く。
母への贈り物にしよう。
優しく手折ろうとしたその時ーーー
「止めておけ…その花は病人には毒だ」
声をする方へ視線を向ける。
柿の木の上に座りこちらを見下ろす大柄の男は着物の上をただ肩からかけ、割れた腹筋を見せるように乱雑に羽織っていた。
陽菜乃「…あなた、誰?」
ここは禪院家の敷地、余所者が安易と入る事ができない結界が張られている。
「ククッ、俺を見ても恐れんか。無知なのか…はたまた腹の座った小娘なのか。…面白い」
木の枝からふわりと地面へ着地しただ肩に乗せられただけの着物からは4本の腕が見え、また木の影となりはっきりと見えなかった顔には4つの目と額から鼻にかかる形で顔半分にもう人つの顔が張り付いていた。
「怖いか?俺が…」
陽菜乃「……少し。でもそれを言うなら私は?」
狐耳を下げふわりと尾を上げ目の前の男に見せる。
陽菜乃「私の方がおかしいでしょ?獣の耳、しっぽ…人には無いものが私には付いてる。
でも貴方はただ…人より顔と腕が多いだけ。それだけだよ」
「…………。お前は変わっているな。
皆俺を鬼神と恐れ畏怖する存在だと言っているというのに」
陽菜乃「……そっか。やっぱり…他と違うっていうのはただそれだけで居たらいけない…のかな?」
小さな身体から溢れ出す負の感情…悲しみ、苦しみ、羨み
それを見て男は笑う。
「泣いておるのか?ククッ、そんなものは腹の足しにもならん無駄なものだ。だがお前の抱えるその感情、それは必ずお前の力となる。
あと少し…10年だ……
それから、、、今日の事は忘れろ……」
トンーーーー
宿儺が陽菜乃の額に中指を当てた途端、陽菜乃の視界が歪み意識を失う。
「ククッ、楽しみだ…」