第2章 第一章
夕方、家に帰ると案の定あいつは家を出て行った後だった。
乱雑に置かれたメモには、『俺が帰るまでにさっさと寝ておけ失敗作』と書かれている。
いちいち言われなくたってそうするし、お酒におぼれて鍵を無くして毎回たたき起こしてくるのはお前だろうがと、メモをぐちゃぐちゃに破り捨てる。
「今日こそ、どこかの悪魔にでも殺されたりしてくれないかなぁ……」
とはいえ、あいつはマッドサイエンティストだ。
実験をしているだけあって、並の悪魔では太刀打ち出来ない。
その証拠に家には様々なからくりが仕組んであるし、あいつの身体にもそれなりにからくりがある。
実験と称して、毎日色んなからくりを作っては、自宅の至る所に設置したり、どこからか捕まえてきた悪魔達の身体に埋め込んだりして楽しんでいる程だ。
「毎回からくりにひっかけたいたいけな悪魔を解除してんの誰だと思ってんだか……そんな私に失敗作だなんだって、クズの鏡だよね」
決して酒癖が良くないあいつは、自身のからくりにそれは大量の悪魔をつけて帰ってくる。
泥酔して眠りこけるあいつの体内から、助けてだの苦しいだのと絡まった悪魔の悲痛な悲鳴が聞こえ、その度に私がからくりから助け出している。
そうしないとろくに眠れないしね、本当に迷惑極まりない。
「……え、もう帰ってきたの?」
家のチャイムが鳴らされ、私は時計を見る。
時刻は20時を指している、帰ってくるにはあまりにも早すぎる。
面倒だが、放置していると余計に面倒になるのでしぶしぶ玄関へと向かい、複雑なからくりを解いてから玄関を開ける。
「パパ、お帰りなさい……え?」
私の目の前には、首だけになったあいつと、あいつの首を右手に持っている赤い悪魔がいた。