第2章 第一章
「お前は失敗作だ、本当に我が娘ながらありえない」
何度も言われてきた言葉に、うんざりする。
一番の失敗はお前だろうと心の中で悪態をつきながらも、それを表に出した後の面倒さを考え、必死に押さえつける。
「……ごめんなさい、パパ」
「謝罪はいらないと何度言えば分かるんだ、さっさと支度をして出ろ」
「……はい、パパ」
朝食を用意させるだけさせ、ぶっきらぼうに言う父親にイライラを募らせながらも、必死に自分を落ち着かせ、出かける用意をする。
最近こいつのせいで外を歩くと必ずと言っていいほど睨まれたり襲われそうになったりする。
本当にどちらが失敗作なのかと言いたくなるほどだ。
「……行ってきます、パパ」
「そのまま帰ってこなくてもいいぞ、さっさと行け。ああそれと今日の分だ、忘れずに飲んでおけ」
「……はい、パパ」
反吐が出そうになりながらも、平静を装って家を出る。
一分たりとも同じ空気を吸いたくない……そんな一心で真っすぐいつも行っている図書館へと足を運ぶ。
うるさくないし、何より大好きな読書ができる夢のような空間だ。
どうせ夕方くらいから、あいつは家を出てそこらへんで飲んで帰ってくるだろうし、その頃合いを見計らって家に帰れば遭遇することもないだろう。
「……」
道行く悪魔から向けられる、奇怪なものを見るような視線を無視しながら、大好きな本の事だけを考える。
最初こそ、あいつに気に入られようなんて考えていたけど、それはすぐに無意味な事だと気が付いた。
だってあいつにとっての子供は、実験なんだもん。
「……いつまでこんな生活続けないといけないんだろう」
本気を出せば、”処理”する事は出来ると思うけど、あいつは一筋縄ではいかない。
嗚呼、どうして私はあんなクズの娘なんだろう。
そんな事を考えながらも、私は必死に笑顔を作って図書館の中へと入っていくのだった。