第2章 第一章
「……」
目の前の光景に、私は頭をフル回転させて考えた。
まず、あいつは間違いなく死んでいるということ。
そして目の前の赤い悪魔は、あいつのからくりを解いたうえで殺したということ。
それはつまり……私は晴れて自由の身になったということ!
それが分かったとたんに、笑いがこみあげてきた。
『……こんばんはお嬢さん、夜分遅くに失礼します』
「こんばんは素敵な紳士さん!」
そんな私を奇妙に思ったのか、目の前の赤い悪魔は不思議そうに首を傾けながら笑顔で挨拶をしてきた。
声にノイズのようなものがかかっている……ラジオっぽいけどどこかで聞いたことあるようなないような。
私も嬉しくてついニコニコと笑顔で挨拶を返すと、益々首を傾ける。
自分でもおかしいと分かっているが、さっきから嬉しくてつい顔がほころんでしまうのだから仕方ない。
「パパを殺してくれて、ありがとうございます!」
にっこりと笑みを浮かべ、目の前の悪魔へお礼を言う。
そういえばどうやってからくりを解いたのだろう、相当の実力者でない限りは難しいと思うんだけど。
そんなことをのんきに考えていると、突然目の前の悪魔がずいっと顔を近づけてきた。
あ、これは殺されるかもしれない……でもいいや、このまま死んでも何の悔いもないし!
『……いい笑顔をしますねぇお嬢さん、お名前をうかがっても?』
「……ゴレア、ですけど」
『ゴレア……貴女にぴったりな名前だ』
そういいながら、目の前の悪魔は私の顔を優しく撫でてくる。
何が気に入ったのかは知らないけど、すぐに私を殺す気はないみたい。
こんなふうに頭撫でられたの、初めてだな……暖かい。