第3章 【裏】同室の情事
一方のリヴァイも、初めは自身でも、レイに対する男たちの猥談になぜそれほど苛立つのか正直わからなかった。
兵団には他にも女はいる。
ミカサにペトラ…
まぁ変人のハンジもいるが、それぞれ皆魅力のある女たちだ。
大切な仲間としての彼女たちへの想いとは明らかに違う思いをレイに対して抱いているのだ、と気づいたのはもっとだいぶ後の話だ。
それまでは訳もわからずレイに近づこうとする者を見れば立ち上がれないほど殴ってやりたい衝動に駆れながら、
「くだらねぇ話してねーで訓練に集中しろ」
などとそれらしい理由をつけてヤキを入れていた。
リヴァイが自分の気持ちに改めて気付かされたのはエルヴィンが関係していた。
ある日エルヴィンがレイに対して明らかに他の団員へのものとは違う、熱い視線を送っていることに気づいた。
レイの格闘訓練となると、普段はあまり団員と積極的に対戦をしないエルヴィンが相手となり、やけにユルい、決してレイを傷つけまいとする格闘訓練を行うこともあった。
「てめぇ、レイの時だけ何手ぇ抜いてやがる」
そう言うとエルヴィンは答えた。
「気づいていたか…
まぁでもあんな可愛い子、殴ったり蹴ったりできる訳ないだろう。
リヴァイも男ならわかるだろう…
俺は、彼女のことを非常に気に入ってしまったんだよ」
その瞬間、無意識のうちにリヴァイはエルヴィンの胸ぐらを掴んでいた。
「てめぇ…エルヴィン。
レイに手ぇ出したらたとえお前でも許さねぇ…」
エルヴィンは一瞬たじろいだように見えたが、自身げに体勢を立て直して言った。
「まさかお前も…とはな。
まぁいい。
こういった話ばっかりは相手あってのことだ。
レイを落とすのはお前か俺か、はたまた全然別のやつか…」
そういうとエルヴィンは静かにその場を去った。