第2章 【裏】怪我後の身体調査 1
「お前、レイといったな。
壁外でも言ったが、筋肉があまりに足りていないんじゃねーか」
突然名前を呼ばれてドクンっと心臓が跳ねる。
「はい。よくハンジさんや同じ隊の仲間からも言われます。
筋トレではノルマ達成をできないことも多いですし、
対人格闘の時などにはいつも隊の仲間にふっ飛ばされてしまって…お恥ずかしい話ですが」
そう答えるレイ。
「ならばレイ。お前の得意技はなんだ。
あのクソメガネがお前にやけに目をかけているそうだが、それはなぜだ」
抑揚のない低い声でリヴァイが聞く。
「いっ…いえ!ハンジさんが私に目をかけてくださっているだなんてとんでもないことですが…
でも、いつもハンジさんは私のブレードの使い方と、立体機動装置で飛ぶ速さについては褒めてくださいます。
とってもありがたいお話で…」
「そうか」
リヴァイはそう呟くと続けた。
「それにしてもレイ。お前はなんでそんな気取った喋り方してやがるんだ?」
ギクリ…
兵団ではなるべく隠すようにしていたが、緊張すると名家の娘であるレイは元々の丁寧な喋り方に戻ってしまうことがあるのだ。
「申し訳ありません!
そのようなつもりはありません!
本日はただリヴァイ兵長にお礼をと、まいりました!」
と、兵士らしく語気を強めてもう一度拳を心臓の前に掲げ兵式敬礼をする。
またもその敬礼によって胸がグイッと押しつぶされているのが視界に入る。
「チッ こちらの気も知らず誘いやがって…」
そう心の中で舌打ちをしたリヴァイ。
「いや、お前確かフォンシュタイン家の出身だったな。
その気取った喋り方も悪くない。
しかし…」
と続けた。
「礼を言いたいというなら、俺のやり方でやってもらおうか」
レイがリヴァイの目を見ると、熱のこもった眼差しでレイを見つめていた。
憧れていたリヴァイがじっと自分を見据えていることに、ほのかな感激を覚えるレイ。
きっと、自分はひとりの女性として見つめられているわけではないと思いつつも、胸が高鳴る。
「兵長の…やり方でお礼、というのは、どのようなことでしょうか?」