第2章 【裏】怪我後の身体調査 1
今このタイミングはまずい…
珍しく焦るリヴァイ。
しかし、そんな焦りもすぐさま消え、リヴァイもまた意志が固まったようにドアを開けた。
「入れ」
要件を聞く前に部屋の中へとレイを招き入れる。
レイは今日朝から起きた一連のことから、リヴァイにはその存在すら認識されていないのだろうと思っていたため、部屋に招き入れられたことに少し驚いた。
まだきちんと言えていないお礼を言いにきたのだが、ドアの外でお礼を言うだけで十分だとさえ思っていたのだ。
目の前でじっとリヴァイの顔を見つめたレイ。
黒い瞳だと思っていたその瞳は、その奥に紫色のような光を宿し、なんともいえない美しさをたたえていた。
兵服の上からでもわかるその複雑に盛り上がる筋肉が、目の前にいるのが人類最強の人物であることをいやでも思い出させる。
憧れていたリヴァイ兵長の、ホンモノがいる…
お礼を言いにきたはずが、うっとりとリヴァイを見つめて頰を赤めてしまったレイ。
リヴァイは敢えてここで冷たく言い放った。
「何の用だ」
突き放すような声色にレイは我にかえる。
そうだ。
リヴァイ兵長にとって私は存在するかどうかも怪しい存在。
こんな子どもっぽい私なんかの裸を見たって、眉ひとつ動かさないような大人の男性だった…。
そう思い直してキリッと前を向く。
「あの、兵長。
今日は巨人に食べられそうになるところを助けていただいてありがとうございました。
兵長がいなければ私…今頃この世にはいませんでした」
なおもリヴァイは変わらぬ様子で
「そうか。それはよかったな」
と言う。
しばらく続いた沈黙。
沈黙にいたたまれなくなったレイが先に口を開いた。
「あ…あの、それでは兵長、私はこれにて失礼します。
今日は本当にありがとうございました」
と敬礼をした。
胸の前に拳を当てるその敬礼。
リヴァイはレイの顔を真っ直ぐ見つめていたが、その敬礼によってレイの胸がぐにっと持ち上がるのが視界の端に入ってくる。
くるっときびすを返して退室しようとするレイに
「待て」
気づけばリヴァイは呼び止めていた。