第2章 【裏】怪我後の身体調査 1
心の中でやるじゃねえか、と思ったリヴァイだが、
そんな褒め言葉を隊員に言うのは性に合わない。
「おぃ…お前もうちょっと筋肉を鍛えておくんだな。
この程度でへたばってたら…」
と言いながら、巨人の口から生還した隊員の顔を見た。
すると、死を覚悟しながらも必死で戦ったあとの、レイの顔がそこに。
顔は恐怖で真っ白にこわばり、髪は乱れていたが、その美しい顔ががリヴァイを驚いたような顔で見つめていた。
日頃、美しい女に見とれることなど決してないリヴァイ。
だが、先日見たあの気品あふれる笑顔とはまた違う、鬼気迫るレイの美しさに、次の言葉を無くしてしまったのだ。
壁内へ帰還後も、あのリヴァイを見上げた美しい顔がちらつく。
すると、リヴァイ班のオルオが小走りでやってきた。
「リヴァイ兵長。
あの…ハンジ分隊長んところのレイが、兵長に会いたい…ってきてるんですが…
なんでも先ほどもお礼を…って、なんのことか分かんねーっすけどね」
ドキリとした。
自分自身が、女をひと目みただけで言葉を失いその場を去るような男だとは思ってもみなかったリヴァイ。
なんの心の準備も無しに会うのはまずい。
とっさに
「俺は今忙しい。追い返せ」
と言った。
オルオは
「えぇ〜!レイちゃんっていやぁ、絶世の美女ですぜ〜
断るなんて、いくら兵長でももったいないってもんですわ」
と抜かし始める。
何かと目ざといオルオに気づかれては面倒だと、敢えて眉間に皺を寄せ
「おぃ…」
とだけ言うリヴァイ。
人類最強の兵士のその白い顔に浮かぶ、神経質そうな眉間の皺を見て、震え上がらない者はいない。
慌ててオルオは
「ハっ…ハイ〜!」
と、情けない声で返事をすると、その場を後にした。