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依々恋々 -Another story-

第37章 FRIENDS


「時間が経つと、香り飛ぶぞ?」
「そうなの?」
残念そうにするジウに、あ、となにかを思いついたシャンクス。近くの百貨店に入ると、喫煙具が揃うフロアに向かう。

「少量を持ち運べるシガーケースを見せてくれ」
シガーケース?とカウンターに並ぶライターやパイプを眺める。

「こちらは、2〜5本の紙巻きタバコを収納できるものになります」
店員が持ってきたのは本皮や銀製の名刺入れのような箱。
カウンターに並べられたそれらを手にとり、開いたりしてみるシャンクス。
黒や濃茶、銀のそれらに、ふむ、と顔を上げる。
「彼女が持って違和感のないデザインはあるか?」
店員に目線を向けられたジウは、戸惑って会釈した。

お待ち下さい、と少しして出されたベロアの貼られたトレー。シルバーで囲われた黒地の中に、蝶や四君子が艶やかに描かれている。
「きれい、」
ほう、と見惚れるジウに少し笑ったシャンクス。
順に手に取り、螺鈿の花弁と蝶が目を引く一つを差し出す。
「こういうタイプなら煙草自体の香りも飛びにくいし、鞄に入れてもにおい移りしにくくていいだろう」
細く、縦に2本を2列に、4本収納できるケースをカードと一緒に店員に渡す。
「待って、自分で...」
じっ、と見つめるブルー・グレイに出しかけた財布から手を離す。

「ありがとう」
素直にお礼を伝えてシャンクスの手を握ると、ニッ、と嬉しそうに笑った。


通路脇のベンチにかけると、手持ちの煙草箱から包装を断ったシガーケースに移し替える。
「日が経つと香りが飛ぶからな。定期的に入れ替えてやる」
「ありがとう」
差し出されたシガーケースを大事そうに受け取ったジウ。
(ギュッてしたいっ!)
持ち上がった腕をなんとか制御し、時間を確認する素振りで誤魔化す。
「っそろそろ改札の方に向かうか」
「そうね。待たせると悪いし」
大事そうにシガーケースを鞄にしまって、よし、と笑ったジウの手を取ると、改札までの最短ルートで店内を抜けた。
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