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依々恋々 -Another story-

第36章 好きで、好きで



 ✜

帰宅路。
その最中、目の前の制服に、あ、と声が漏れた。

手紙の彼女と同じ服装に、少し、胸の奥が狭くなる。

(シャンは、きちんと断ってくれたじゃない)
誠実に対応した彼にも、わかってくれた彼女にも失礼だ、と頭を振る。

遠くで車のクラクションの音がする。 

(大丈夫、何も心配ない)
あれから、シャンクスが不審な動きをしているとか、彼女と会っている様子がある、なんてことは皆無だ。
骨折り損だ、と少し足が早足になる。


「ジウ」

(大丈夫、大丈夫。)

「ジウっ」

(心配ない。怖くない、こわ、く、ない...)

「おいっ」
「きゃあっ」

突然肩を掴まれ、離してっ、と手にしていた鞄を振り上げた。
バシッ、と音の後、あぶねぇ!と聞こえた声に、え?と目を開ける。

「痴漢対策としては悪くねぇが、ジウは力が弱すぎるから効果はあまりなさそうだな」
「っシャン!」
「割と重いな、この鞄」
片手で掴んでガードした通勤鞄を見て、何入れてんだ?と聞く。

「外部の打ち合わせがあって、思ったより早く終わったんで連絡入れてたんだが、見てないな?」
振り上げた鞄を取り上げられ、え?と慌てて携帯を確認する。

「センターの近くまで行ったが、いつもの時間過ぎても出てこねぇから、先に帰っちまったんだろうと思ってジウの部屋に向かってたら姿が見えてな。何度か声かけて、クラクションも鳴らしたんだが...」
「嘘っごめんなさい!全然気づかなくて...」
「考え事か?あまり往来で考えすぎると、危ないぞ?」
掻っ攫われちまうぞ?と笑うシャンクスに、ごめんね、と少し笑う。

「ジウ」
ポン、と優しく頭に乗る大きな手。

「話せそうか?」
頭を抑えられているので、少しだけ目線をあげると、優しく撫でられる。

「抱えてるもんは、全部話せって言ったろ?」
また遠慮しあがって、と温かい手が頬を包む。

「ちゃんと聞かせてくれ。ジウを知りたい」

どんな言葉でもいいから、と柔らかな瞳で見つめるシャンクス。

俯き、唇を噛んだジウ。

「シャン、の部屋に...行っても、いい?」

微かなその声に、ああ、と優しく頷いたシャンクスに手を引かれて、車に乗り込んだ。

 ✜
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