第36章 好きで、好きで
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部屋に入ると、ジウをソファに座らせ、シャンクスは手を握って隣にかけた。
「ごめんなさい。シャンのことは信じてるのに、信じてる自分を信じられなくてっ」
必死に想いを伝えようと早口になるジウ。
「わかってるのっちゃんと断ってくれたこと、あの子のためにっきちんと、シャン自身の気持ちで私とのことを選んでくれたことっでも、でも、怖くて...そう『させてしまってるんじゃないか』って...ごめんなさい、ごめんなさい」
ポタポタと手の甲に落ちる涙。
「ジウは優しいからな」
指先で水滴を拭い、ジウを抱き締める。
「俺がジウを選ぶことで、彼女が傷ついたんじゃないかって怖いんだよな。
でも、信じてくれ。
俺は、俺の意志でジウを選んだんだ。
ジウといたいって思ってる。これからも。
でも、そうだよな。言葉だけじゃ、未来は確約できないからな。
ジウの気持ちもわかるさ。
だけど、決めたのは俺だ。ジウじゃない。
俺が、ジウを選んだんだ。
ジウに選ばせたんじゃない。
すぐには難しいだろうが、少しずつ、俺を信じてくれないか?
ジウが俺を選んでくれたのは、他の誰でもないジウ自身の意志だろう?」
同じはずだろう?と髪を撫でる。
「シャン、」
「なんだ?」
少し身体が離れると、ジウの白い手がシャンクスの左手の小指を掴んだ。
「好き、」
キュ、と力が込められた手を握り返す。
「愛して、る」
「俺もだ」
来い、と右腕で抱き寄せる。
「ちょっとは揺らいだ?」
「いいや」
「ほんと?」
上目に見上げる黒髪を撫でる。
「あー、あの制服をジウを着せたいな、とは思った」
「え?なにそれっ」
ジウの顔が緩み、シャンクスも微笑んだ。
「似合うと思うぞ?」
「そう?」
「メイド服もいいな」
「...へんたーい」
「ナースとか」
もう、と笑って胸に凭れ掛かる。
「じゃあ、シャンにも着せる」
「おっいいぞ。なにがいい?」
「...考えとく」
ケタケタと笑う顔を見上げてもう一度指を握り直すと、ぺろりと涙の跡を舌で拭い、優しく抱きしめてくれる腕のぬくもりにそっと縋った。
end