• テキストサイズ

依々恋々 -Another story-

第36章 好きで、好きで


お待たせしました、と運ばれてきたミルクセーキ。
「彼女に」
配膳された淡いクリーム色を見つめる。

「早めに忘れてくれ。余計な心配をかけたくない」
「彼女さんのこと、好きですか?」
「当たり前だろう」

即答され、わかりました、と背筋を伸ばした。

「お兄さんのこと、好きになれてよかったです」
「...知ったような口を利くもんじゃない」
すいません、と謝る。
ん、と顎先で促され、ミルクセーキのストローを咥えた。

「感情のままに動けるのは、若い証拠だ。時に過ちも犯すだろうが、後悔はするなよ」
じゃあな、と去るシャンクス。

「え、あ、待ってくださいっ」
慌てて席を立とうとするが、そこにタイミング悪く店員が来た。
「ホットとパンケーキです」
テーブルに置かれた2つに、どうしよう、と困っていると、カラン、とドアベルの音がした。
すでにそこにいない姿に、フッと体の力が抜けて、席にストン、と座る。

「ホットは、お下げしましょうか?」
店員の言葉に、しばらく考える。
「いえ、飲みます」

せっかく淹れてもらったんだし、とソーサーを引き寄せる。
真っ黒な水面に映る自分を見つめ、そっと持ち上げた。
「っあっつ!にっがっ!」
うえ、と舌を出し、ジュー、とミルクセーキを勢いよく吸い上げる。
「うえ、あっま」
複雑になってしまった口の中を水でリセットする。

はあ、と息をついて、ホカホカの湯気を上げるパンケーキを見た。
カトラリーからナイフとフォークを取り出し、切り分ける。
表面はサクリと、中はしっとりとしたパンケーキ。

(おいしい)

温かくて、香ばしくて、ほんのり甘い。

冷たいミルクセーキを飲むと、温かい甘さが一瞬で消えてしまった。
もう一口パンケーキを切り分け咀嚼すると、今度はコーヒーを飲む。
ミルクセーキまでとは言わないが、もう少し甘みが欲しい。
今度は、パンケーキにシロップを垂らして頬張る。
それからコーヒーを飲むと、甘いと苦いのマリアージュ。

「コーヒーに合うのは、ミルクセーキよりパンケーキか」

そもそも、飲み物と飲み物の組み合わせなんておかしいのだ、とパンケーキにたっぷりシロップをかける。
パンケーキとミルクセーキを空にすると、少し冷めたコーヒーを飲む。

「ほろ苦いって、本当はめっちゃ苦いじゃん」

初恋の味なんかじゃない、と砂糖とミルクをぶち込んだ。

 ✜
/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp