第36章 好きで、好きで
「あ、いた。ねえ、シャン、青?緑?」
どっち?と手にしたチューブを彼に見せている。
様子がおかしいことに気づいたのか、どうしたの?と彼を見上げる。
何?と振り返った彼女。
「?こんばんは」
こちらに会釈すると、知り合い?と彼に向き直る。
「あー、とな」
はっきり言わない彼に、あのっ!の声をかけ直す。
「手紙、読んでもらえましたかっ」
「それなんだが...」
ちら、と彼が目線を寄越した彼女に向く。
「あなたは、お兄さんの恋人ですか?」
「えっ、と...『お兄さん』?」
ちら、と彼を見上げる視線に、一歩前に出る。
「どうなんですかっ」
「え、あ、そ、うです」
「おい、ジウっ」
ジウ、と呼ばれた彼女は、状況がわからずに混乱した表情。
「お付き合いは、長いですかっ?」
「へ?あ、いや、そんなに、は」
「どっちが告白したんですかっ?」
「え?えっと、」
「喧嘩はよくしますかっ?別れたいって思ったことありますか?!」
「ええ?」
お、落ち着こうか?と言う彼女。
その隣で、弱ったな、と辺りを確認する彼。
「あ、もしかしてあなた、『お手紙』の...?」
知られていたっ!と驚きながらも、それなら、と拳を握る。
「私、お兄さんが好きなんです!」
驚いた顔で固まる2人に、今更止まらず、早口に言う。
「はっきり言って一目惚れです!
ここの近くでアルバイトしてて、お店に来てくれたお兄さんが好きになりました。
いつもコーヒーだけだったけど、しばらく来てくれなくて...」
そうなの?と見上げる彼女に、だからっ、と声を張り上げる。
「お兄さんにアタックしていいですかっ?!」
「はっ?」
「え?」
揃って声を上げた二人。
「私っ、ヘレンって言います!高校2年生で、私立熱雨百合女学院に通ってます。部活はしてなくて、成績は、普通!あっ彼氏がいた事ないんで、未経験ですっ」
彼女の発言にぎょっ、と目を見開くシャンクス。
「えっと、それから...」
「ごめんね、話を遮っちゃうけど、ちょっといいかしら?」
はいっ!と意気込んで彼女に向き直る。
「少し、時間をもらえる?あまり遅くはならないようにするから」
いい?と見上げられた彼は、少し考え、わかった、と頷いた。