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依々恋々 -Another story-

第36章 好きで、好きで



 ✜

「はあ」

アルバイト先のロッカールームでため息を付く。

 い、妹!とか
 あそこが会社でしょ?同僚?とか
 そ、そうだよっ。カノジョとは限んないって

(距離、めっちゃ近かった...)
アレで妹は無理でしょう、と制服のエプロンを締める。
「萎える...」
はあ、とため息を付き、ネームホルダーをつけた。
店先に出るとすぐ、テイクアウトね、とカップの紅茶とコーヒーを渡される。
カップのラベルで客を呼び出す。

「おまたせしました〜」
「ありがとうございます」

カップ2つを受け取ったのは若いOLらしき女性。
「こちらがモカのミルク追加、こちらがティーラテになります」
「ありがとうございます」
「熱いのでお気をつけください。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
両手にカップを持って会釈すると、店先に出る。

「あ、」
彼女が歩み寄った姿に声が出た。
差し出したカップを受け取り、ピタリと隣に立つ、背の高い赤い髪。
バッグから何かを取り出そうとする彼女からカップを取り上げ、器用に片手でリッドを外すと、吐息で冷ます。

取り出された携帯で何かを示す彼女に二、三言話しかけ、カップを一つ渡し、あいた手を繋いだ。
そして、二人、歩いて見えなくなった。

3時間のアルバイトの間、頭の片隅にはずっと2人の様子が巡っていて、ミスを連発し、店長に心配されてしまった。
「おつかれ。しっかり休むんだよ」
「ご迷惑おかけしました。おつかれ様でした」

(最悪な一日だった...)

あーあ、と空を見上げ、帰路につく。
(やけ食いでもしようかなぁ)
ドラッグストアでスナック菓子をを買い漁ろう、とバイト先から最寄りの店舗に入る。
お菓子は、と陳列棚に向かった。

「あっ」
「、あ」

スウェットに黒のカットソーで立つ彼は、缶ビールを片手に2本持っていた。
「こ、こんばんはっ」
とっさに挨拶すると、こんばんは、と会釈して目を逸らす。
そのまま、通路の角と角と言う半端な距離感のまま黙る。

「あのっ、この前は突然失礼しましたっ」
「あ、ああ。いや」
視点が定まらない彼に少し歩み寄ると、奥の通路の方に目線をやった。

「手紙のこと、なんですけど」
あー、と声を漏らした彼に、読んでくれたか問う言葉を掛けようとした時だった。

両手に男性向けのシェービング剤を持った女性が彼を呼んだ。
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