第35章 Swim wear
浜のテントから、少し先の砂浜で遊ぶジウとサナを眺め、冷たい炭酸水を飲む。
「赤髪、悪いがサナを頼む」
ん?と携帯を睨みつけて舌打ちするローを見上げる。
「病院からだ」
「ああ、わかった」
電話に出るロー。
キャップを閉めたボトルをテントに放り込んで二人のもとに向かった。
「シャンクスさんっ!見て!」
少し深く掘られた砂浜を指差すサナに、なんだ?としゃがむ。
二人が見ていた穴に溜まった海水の中にいるソレに手を伸ばす。
「イソガニだな」
「食べれる?」
「食えんこともないが、この大きさだからな」
ハサミに気をつけながら、足の方から腹と背をつまみあげる。
「ガキの頃は釣りの餌にしてたな。イシダイとか釣れるぞ」
「『エビで鯛を釣る』ならず『カニで鯛を釣る』?エビだって割と高級なのに、変なことわざよね」
恍けたことを言うサナに、何だそりゃ、と笑ってカニを波打ち際に逃がしてやる。
「あれ?ジウちゃんは?」
え?と辺りを探すサナを振り返る。
「あ、」
いた、と指差す先。
引き攣った笑顔で首を振るジウに絡む影に、ピクリ、と眉が跳ね上がる。
(たかだか数秒だぞ)
見上げるサナにアイコンタクトを取り、二人でそちらへ歩み寄る。
「じゃあ、アドレスだけでもっ」
「彼が嫌がるから、ごめんなさい」
「あの、ほんと、変なつもり無いんでっ」
「じゃあ、『どんなつもりか』聞いていいか?」
スル、と背後から首元と腰に絡んだ腕に驚いたジウが見上げる。
「ん?どんなつもりなんだ?言ってみろ」
笑顔で責め立てるシャンクスの輪郭を、やめてあげなさい、と撫でる。
「そういうことなので、ね?」
ごめんなさい、というジウの後ろでブルー・グレイの瞳をギラつかせる影に、すいませんでした、すいません、と男が離れていく。
「ジウちゃん、大丈夫?」
なにもされてない?と手を取るサナに、平気、と微笑む。
「ちょっとしつこかったけど」
困り笑うジウ。
シャンクスはなにも言わずに素肌に来ていたシャツを脱ぐと、ジウには大きすぎるそれをバサリと着せた。