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依々恋々 -Another story-

第33章 Present for you〜Side BLACK〜


ドライヤーのスイッチを切り、先にバスルームを出たシャンクスは、キッチンで水を飲んでいた。
「私にもちょうだい」
受け取った水を飲んでいると、なにかに頷くシャンクス。

忘れるところだった、と特に慌てた様子もなく言う。
「なにが?」
「もうすぐ記念日だろ」
サラリと髪を撫でられる。
(覚えてるんだ...)
へぇ、と見上げると、濡れた髪をかき揚げて撫でつけている。
「意外とそういうのちゃんとするのね」
「意外ってなんだよ」
ひどいやつだ、と笑ってリビングに行くと、いつの間にあったのか、ソファの影から取り出された紙袋。
知らないロゴに、なんだろう?と首を傾げながら隣の空いたスペースに腰掛ける。

「ジウの好みだといいが」
ほら、と湯上がりで火照っているのか照れているのかわからない、薄っすらと色づいた頬で微笑むシャンクス。
(アクセサリーしては、大きいような)
片手には収まらないサイズの化粧箱を開ける。

花を象った、繊細な作りの髪飾り。
髪を結っていても下ろしていても使えるようにと選んだ、というシャンクスを見上げる。

「センスが意外過ぎ」
「気に入らなかったか?」
「まさか、とんでもない」
目を奪われるそれに、自分が用意したものを思い出した。

「なんだ?」
「あけてみて」
笑ってリボンを解く姿は、クリスマスや誕生日の贈り物を開くこどものよう。
普段から使えるように、と選んだ名入れのペン。
文具にこだわりがあったら困るかと思ったが、こだわりがない、と言い切った。
大事そうに化粧箱から取り出す。
色味が揃った、と照れたように笑うシャンクス。
「そうね」
「手帳用にするか」
彼愛用の手帳。
使われていなかったペンホルダーが定位置になるようだ。

ありがとう、と触れたキス。
膝の上の化粧箱からそっと取り出すと、洗いたての髪を耳にかけ、美しい髪飾りでとめてくれる。
似合っている、と嬉しそうに笑う顔。
ゆっくりと伏せられるブルー・グレイに目を閉じると、温かい熱を唇に感じる。
柔らかく髪を撫でた手で髪飾りの位置を確認すると、ゆっくりと倒されるからだ。
そっと指先で触れた手に掴まれ、キツく握り合う。

優しいキスが、情熱的なキスになる頃。
部屋着の下に潜り込んできた手の温かさにすべてを委ねた。
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