第33章 Present for you〜Side BLACK〜
「うーん...」
昼休み。
執務室のデスクでお箸を持ったまま、携帯をスクロールする。
(ネクタイ...冠婚葬祭用らしい物はクローゼットにあったけど、してるの見たこと無いもんなぁ)
ゆっくりと上に画面をずらす。
(ベルト、ハンカチ...カードケースはブランド物持ってるし)
それなりにこだわりがあるのか、ただ単に色々見るのをめんどくさがってメーカーを固定しているのかは知らないが、意外とブランドは統一されている彼の持ち物。
ふと、以前にサナがローに送ったというものを思い出す。
(そういえば、あの万年筆以外に筆記用具って無いかも?)
彼が忍ばせた、赤の万年筆を思い出す。
あれ以外の筆記用具は、多分会社で使っている物の応用品で、量産のシンプルなボールペンしか見たことがない。
スケジュールの管理には基本携帯を使っているようだが、時折彼が開く手帳への書き込みに使っているボールペンは、量産品のものだ。
贈答品向けの筆記用具を検索する。
(いいかも、)
高級品は買えないけれど、とあるブランドのペンが目に止まった。
筆記用具としては贈答品として申し分ない。
近くの直営店を探して、付箋にメモを取った。
✜
「名入れはされますか?」
お願いします、と言って、差し出された紙にスペルを書き込む。
しばらくお待ち下さい、と紙と品物を引き受けた店員。
(ペンなら、いくつかあっても困らないよ、ね?)
喜んでくれるかな、と少し不安も抱えながら待つ。
おまたせしました、と差し出されたペンの刻印を確認してラッピングしてもらう。
(一ヶ月の記念品としては、ちょっと重い?)
でも、ペアというわけでもないし、と自分に言い聞かせた。
地下鉄につながるフロアに降りた時、シャンクスからのメッセージを受信した。
いつものこちらに向かう、という内容に、たまには、とデパート内で夕飯の食材を選ぶことにした。
(シャンと買い物すると、また払わせちゃうし)
行きつけのスーパーより高くつくが、せっかく来たんだし、と少しワクワクした気持ちで生鮮食品売り場へと向かった。