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依々恋々 -Another story-

第32章 Present for you〜Side RED〜



キラキラとライトに煌めく装飾品を前に唸る。

「なにかお探しものですか?」
ニッコリと笑って歩み寄ってきた店員を適当に躱して一角から離れた。

一人、首を傾げて百貨店のフロアを闊歩する。

左右に並ぶショーケースには、燦々と煌めく装飾品。

どうしたものか、と通路に設置されたソファの一つに掛けて手を組んだ。
眼の前を行き来する、ジウと同じ世代の女性客や店員をそれとなく観察する。

(ジウはピアスはしないな)

向かいのショーケースの整理をしている女性定員の耳元の輝きから目を逸らす。

(指輪...一年より前の記念日の品としては重いか?)

渡すなら将来を約束するためのものをもっと時間を掛けて探したい、とショーケースの中のリングを見る。

(ネックレス、ブレスレット、イヤリング...)

これまでに女性にねだられて買ったことのある装飾品を思い出して悶々としていると、ふと、目の前を通り過ぎた女性が、おろしていた髪をサッと纏めあげて再び歩き出す。


「髪飾りか...」
出会った頃よりも少し伸びたジウの黒髪。
確か、とソファから腰を上げてある一角を目指す。

  ✜

ありがとうございました、と言う店員の声を背中で聞いて、手元のショッパーを持ち上げる。
女性用のアクセサリーを自らの意思で買ったのは初めてだ、と中を覗く。
きっとジウの黒髪に映える、と頷いた。
地下の食品売り場でジウが好きそうな紅茶も探してみようか、と足を向けた時、ポケットの携帯が鳴る。

本社からの連絡にいつもの調子で出る。
「なんだぁ?」
-あっ!社長!どこにいるんですかっ!?常会、始まりますよ-

焦るアメリの声に腕時計を見ると、あと10分で会議が始まる。そんなに長くかかっていたか、と早足にエスカレーターを降りる。

「悪い、ちょっと私用で出ていた。少し遅れる、とベックに伝えてくれ」

そう離れていない社屋に戻り、執務室へ向かうと、こちらです、とアメリが出迎えた。

「ちょっと待ってくれ、資料取ってくる」

奥の執務机。
一番下の引き出しにそっと大きくない紙袋をしまい込み、デスクに置かれた会議資料とペンを手に、副社長が呆れてましたよ、と議場に案内するアメリの跡についた。
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