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依々恋々 -Another story-

第31章 CINEMA


黙ってビールを飲むシャンクス。
画面から逸らす目線に、どうしたの?と頬を撫でる。

「いや、なんでもない」
「人間、『なんでもない』っていうときは、なにかあるものよ」
なんだそりゃ、と少し笑ってビールを飲み干す。
「『かっこいい』は、車の事だったのか」
「?そうよ?」
キョトン、と見上げる顔に、あーもー、と髪を乱す。


「もしかして、俳優さんのことを『かっこいい』って言ったと思って嫉妬したの?」


ピク、と跳ね上がった眉尻とキュ、と寄った眉根。
「るっせ、バーカ」
バーカ、バーカ、と言いながら、肩口に額を擦り付ける。
「ふふっ擽ったいよ」
うりゃ、と腰を抱いていた手が絶妙な力加減で腹を撫でる。

「やっ、ふふっやだっ!」
身を捩ると、両手の指先で擽られる。
「ひゃっ!んんっふふふっねぇ!やめてっ」
ひゃははっ、と笑うジウに跨り、内腕や脇腹、首下など弱いところを擽っていく。
「悪かったなぁ!」
「誰も『悪い』なんて言ってないじゃない〜!」
鈴の音のようなジウの笑い声が響く。

「おらっ!やめてほしいかっ⁉」
「あはははっ、やめてっほしい!っふふ、」
笑い転げるジウに馬乗りになり、くすぐり続ける。

「すぐそうやって子どもみたいなことするんだからっ」
しょうがない人ね、と抱き寄せられる頭部。
ピトリとジウの体についた耳から、穏やかな心音が響く。

「童心を忘れないのはいいことだろう?」
「正当化しないの」

可笑しそうに笑う頬に口づけ、寝転がったまま背後からジウを抱き込む。
首下から差し込んだ腕を掴む指先にニヤける。
小さく笑ったジウに、どうした?と脚を絡めた。

「シャンとのこういう時間、好きだな、と思って」
んー、と抱き込む腕に埋もれるジウ。

「ジウ」
ギュッと腕に力を込める。

「キスしよう」

見上げた薄紅の唇に吸い付く。
映画そっちのけで夢中でキスを繰り返す。

ついさっきまで嫉妬していた画面の中の俳優に、ジウを見られるのが癪でプロジェクタの電源を落とした。

暗闇の中でもはっきりと分かる潤んだ瞳に映り込む自分と一瞬見つめ合い、首に腕を回すジウを抱き込んで布団に埋もれこんだ。
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