第31章 CINEMA
自分用の缶ビールとジウ用の度数の軽い缶サワーを手に寝室に入る。
ライトブルーのシーツがかかるベッドに乗り、いそいそと枕やクッションをセッティングしているジウに口元が緩む。
「今日は、何見るんだ?」
ベッドに腰掛けると、プロジェクタに繋いだタブレットで、映画配信のサブスクリプションサービスを操作する。
「アクションが見たいの。00Xシリーズかワイルドクラッシュシリーズがいい」
隣に来たジウとタブレットを覗き込む。
「見てないやつ、あるのか?」
「どっちも最新作、見れてなくて。配信してるかな?」
タブレットを操作しながら、ジウの頭部にキスを落とす。
「00Xは去年公開分が配信されてるな、ワイルドクラッシュの方は...見てるか?」
配信時期が一番直近のものを開く。
「ワイルドクラッシュのは前作で見てるから、00Xにする」
「わかった」
視聴開始の文字をタップし、サイドチェストにタブレットを置くと、照明を落とす。
ベッドの定位置に座って足を伸ばし、おいで、と右腕にジウを抱き込む。
缶サワーのプルタブに苦戦しているジウからそれを取り上げ、片手で開ける。
「ありがとう」
些細なことでも都度礼を言うジウに、キスして、と頬を寄せると少し背を伸ばして、キスをくれる。
スクリーンの中で、派手なカーアクションにより大破していく車たち。
「あれ、CGじゃないのかな?本物?」
クラッシュしてバック走行で走るスポーツカーを操作する主人公は、後続車、と言っていいのか。
向かい合って一方向に走る車からの弾丸を避けつつ、片手運転で発砲する。
「車の動きは実際に開けたところで撮影して、背景をはめ込んだ、ってのはあるかもな。最近はスタントマンを使わない俳優も多い」
「恐ろしや」
プル、と震えた小さい体を抱き寄せ、敵を振り切ったエージェントに目線を映す。
「かっこいいよねぇ」
ジウの言葉に、最後の一口のビールを飲む喉がゴク、と鳴る。
確かに芽吹いた小さな嫉妬の炎。
スクリーンに映るエージェントの男を睨む。
「赤の車」
「ん?」
続いた言葉に漏れる声。
「こういう車からサングラスが似合うお姉様とか降りてきたら、絶対見惚れちゃう」
こういうの見るとたまに運転したくなる、と言う顔に目を逸らした。