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依々恋々 -Another story-

第30章 飼い猫⇔野良猫



テーブルを拭いた布巾を洗い、キッチンの片付けを確認すると、ジウ、と呼ぶ声。

なにー?とリビングに向かう。
少し赤い顔でニコニコしながら手招く片手には缶ビール。
ここ、とソファの上であぐらを組む膝の間に座らされ、腹部に腕を回される。
ふと正面のテレビに流れる動画を見る。

「こういうの好きだろ?」
ホームムービーなどのハプニングや面白い映像を集めた番組。動物たちの動画を集めたコーナーで、真っ白な子猫が段ボールをくり抜いた穴から頭を出しては箱に潜りこんで遊んでいる。

かわいい、とシャンクスの体に背中を預ける。
「猫、触りたいなぁ」
ふわふわな毛並みの子、とジウが呟く。
「ペットショップでも行くか?」
「飼わないのに触りにだけに行くって失礼じゃない?」
そうか、とビールを一口飲む。
「猫カフェとか」
シャンクスの言葉に、ジウはフッと笑った。
「なんだよ」
「いやっ、ふふ、うん。猫カフェ、いいね」
おかしそうに笑うジウの額に手を当て、俯く顔を上げさせる。
「なんで笑ってんだ」
「笑ってない、笑ってない」
誤魔化せれていない頬を、指先で摘む。
「なにがそんなにおかしい?」
「ん、なんか、シャンが猫カフェ行ったら、猫に群がられてそうで」
猫まみれになっている姿を想像して笑った、とジウは素直に白状した。

「犬猫にモテそうよね、シャンって」
「そうか?」
うん、と頷くジウ。
「偶にいるじゃない?マタタビでも持ってるのかってくらい野良猫に懐かれる人」
「ジウなら、懐きたいな」
いい匂いするし、と鼻先を髪に埋める。
「懐く側?懐かれる側じゃなくて?」
「性質的には犬より猫に近いほうだと思うがな」
確かに、自由が好きでひとところに留まれない性質は猫かもしれない、と頷く。

「シャンが猫なら、近辺の猫界では有名な放浪猫ね。行く先々で色んな名前で呼ばれてそう」
「『野良猫』じゃなく『放浪猫』ってのがいいな」
帰る場所がある、とジウの唇にキスをしたシャンクスが首筋にすり寄る姿に、やっぱり猫、とくすくす笑うジウ。


「俺が帰る場所は、ここしか無い」

ちら、と見上げて微笑むブルー・グレーの瞼にキスをして、いつでも待ってる、と広い背中に腕を回して抱きついた。
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