第26章 LOVE LETTER
眠ってしまったジウを抱いて自宅に上がる。
車で手元に出しておいたキーで自宅に入り、ベッドにジウを寝かせた。
車で声をかけたが起きる様子がなく、疲れて眠ってしまっただけなのか眠りの症状が現れているのかわからない。
布団をかけてやり、握った手の甲に口づける。
その手に額を擦り寄せ、目を閉じる。
ギュッ、と小さな手を握る。
(こんなに弱かったか?)
微かに震える胸に、深い息を吐く。
ジウに向けられる、自分と同じ感情を目の当たりにして、怖くなった。
いつか、奪われるのではないかと。
廊下からの光が入るだけの暗い寝室で、握った手に頬を擦り寄せる。
もしも、ジウが、自分が彼女に向ける感情に怯えてしまったら、一体自分はどうすればいいのか、と「かもしれない」恐怖をおぼえる。
もしも、ジウが、他の男を愛したら?
もしも、ジウが、自分を不要だと判断したら?
もしも、ジウが、自分を愛せなくなったら?
もしも、ジウが、自分を忘れてしまったら?
(その時は、)
一体自分はどうするというのだ、とハラリ、と落ちた前髪を、首を振って払う。
(そう、ならないようにするだけだ)
考えてもきりがないのだ、と無理やり思考を引き剥がし、薄化粧の頬を撫でる。
洗面所に置かれるようになった拭き取り式の化粧落としでやさしく寝顔を拭う。少し、幼さが宿る寝顔。
「シャン、」
なんだ、と返す。
開く様子のない瞼。
ぽかりとあいた小さな口元がゆっくりと微笑む。
抱えるものが多い彼女が、せめて夢の中では自由であるようにと。
願わくば、その隣にいさせてほしいという祈りを込めて。
「Sweet dreams.My precious.」
狭い額に一つキスをした。