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依々恋々 -Another story-

第26章 LOVE LETTER



「お疲れ様でした」
職員用通路の警備員に挨拶して、ガラス扉をくぐる。

3分ほど前に駐車場についているという連絡を寄越した彼。
駐車場でアイドリングされている車を見つけて歩み寄る。

「あのっ!」
駐車場の脇に佇んでいた人に声をかけられた。
「返事っもらえたら嬉しいですっ!」
パッ、と取られた手に握らされたのは、茶色の手紙封筒。

「失礼しましたっ!」
「え?あっ、ちょっと」
突然の事に呆けているうちに、タッ、と走り去っていく背中。
大学生くらいだろうか。自分より少し若そうだ。
なんだったのだ、と呆然と立ち竦む。

「おい、」
「へっ?あ、シャン」
不機嫌丸出しで真後ろに立つ彼を見上げる。

「なんだ、あれは」
「なんで、しょうね?」
車から見ていたらしい。
握らされた手紙。
瞬きをして、どうしたものか、と思案していると、真上からの手に取り上げられた。
「どうするんだ?」
ピッ、と指先で反転させられた封筒。
「ど、う、しようか、ね」
そこに貼られた赤いハートのレターシールに、困ったな、と爪先で頬をかいた。

 ✜

「あの、シャン?」
無言で抱き竦める腕に埋もれる。
いつも通り夕飯を済ませて後片付けも終わらせたタイミングで、ソファに抱き上げられた。長い脚に挟まれ、背後から肩に埋もれる赤い髪を撫でる。
(機嫌、悪ぅ)
また、ギュッと抱き竦める腕を優しく撫でる。

「どうするんだ」
いつもより低い声で顔を上げたシャンクスを見上げる。
「ん、」
顎先で示すのは、ローテーブルに置かれた手紙。
「どうするって、そりゃあ、お断りしますよ」
ふい、と目線を下げ、そうか、と言うとまた肩口に埋もれる。
「え?受けると思ったの?」
くせっ毛の髪に指を絡めて撫でる。

「いや、」
珍しく歯切れの悪い彼の腕の中で身を反転させる。
「ヤキモチ焼いた?」
むー、として俯くシャンクスの髪を撫でる。

「っあ〜くそっ!」
「ひゃあっ!?わっ、ちょっと」
がばっ、と抱きついてきたシャンクスに押し倒される。
「っ苦しいって!」
ギュウギュウに抱きつきながらのしかかる体。

「ジウ」
やっと緩んだ腕の中。見上げると、揺らぐブルーグレーに映る自分と向かい合う。
「キスしてくれ」
優しく腕を引かれて起き上がると、膝の上に抱き上げられる。
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