第24章 かわいいひと
ドライヤーのスイッチを切ると、ありがとう、と見上げる額にキスをする。
「耳、拭く?」
綿棒を手に聞くと、嬉しそうにラグに寝転がるシャンクス。
ここ、と頭を腿に乗せ、軽く耳朶を掴む。
片耳を拭き、反対、と寝転がせる。
スル、と部屋着の緩いハーフパンツの裾から入る手を叩く。
「痛ぇっ」
「そんなに強く叩いてない。手元が狂ったら怖いから今はだめ」
「今は、な。わかった」
意味深に繰り返して腕を組むシャンクス。
「はい、おしまい」
目を閉じる横顔を見下ろす。すうすうと寝息が聞こえる。
軽く肩を揺する。
「シャン、寝るならお布団に入って。風邪引く」
「んんっ、うん」
むくり、と起きていそいそと布団に潜り込むと、ジウ〜、と腕を伸ばす。
一緒に布団に入ると、腕と脚で抱き寄せられる。
額に触れる唇を見上げると、ちゅ、ちゅと二回、角度を変えて重なる唇。
ゆっくりと乗りかかる背中に腕をかける。
「眠いんじゃないの?」
「少し。でも醒めた」
ペロッと舌で唇を舐められる。
「一回だけ」「ほんとに?」
クスリ、と笑ってざらつく輪郭を撫でる。
「明日も仕事だ。ジウがつらいだろ」
だから一回だけ、と額に一つ、キスを落とす。
「遅番だから、多少寝坊でも、ね」
うん、と頷くジウの髪を撫で、ニコリと笑ったシャンクスは、ジウの首筋を軽く吸い上げる。
その感触に、ん、と声か漏れる。
スッ、と体のラインを撫でる手がシャツの裾から入る。
「ジウ」「あ、」
耳元の吐息の声。
チロ、と舌先で耳朶を擽られ、んんっ、と身を捩る。
離れていく体温に目を開けると、シャツを脱ぎ捨てたシャンクスが気づいて微笑む。
その体に腕を伸ばす。
素肌の背中に腕を回すと、ちゅ、ちゅ、と何度も注がれるキスの雨。
「ジウ」
名前を呼ぶブルー・グレイが優しく笑う。
「愛してる」
「私も、愛してる」
嬉しそうにキスをしてくれる腕を掴む。
深くなるそれに縋ると、プツ、と左手がホックを外す。
脚を絡め、背中に回した腕で体を引き寄せる。
少しの明かりもない部屋。
狭い寝床で体温を寄せ合う。
布団が温まる頃には、疲れ果てた体を寄せ合って眠る二人だった。