第24章 かわいいひと
「シャンのそういうところも、好きよ」
ジウの真っ直ぐな言葉に、ありがとう、と照れ笑う。
「たまに、『これで社長で大丈夫?』って思うところもあるけど」
「なんだとぉ?」
フォークを咥え、むに、と柔らかい頬を摘む。
「生意気言うのはこの口かっ⁉」
「そういうところよっ!もうっ」
ほら冷めちゃう、と言われて食事を再開する。
「俺は、ジウの真面目なところも好きだな」
ビールを煽り、缶を持ったまま頬杖をつく。
「頑張り屋なところ...ちょっとしたことでも喜んで、怒って、泣いて、笑う。そういうジウを見て『あー、好きだなぁ』ってつくづく思う」
微笑んだ口元でビールを飲む。
「映画やドラマですぐ泣くとこ。本読み始めると時間を忘れるとこ、子どもと嬉しそうに話すとこ」
「やめてよ、恥ずかしい」
やめない、とニコニコしてビールを飲み干す。
「たまに言葉遣いが急に可愛いとこ、人のことをよく見てるとこ。人が困ってることにすぐに気付けるとこ、それを無視できないとこ。ストレス溜まると歌いだすとこ、酔っ払うとエロくなるところ」
「ちょっと、」
厳しくなったジウの目つきに、んー?と首を傾げた。
「なんか間違ってたか?」
「ちょっと感動したのに、最後の一言で台無し」
サク、とフライを噛んでむー、とむくれる髪を撫でる。
「ジウは、いつまでも少女みたいな反応するな」
「バカにしてる?」
「『かわいい』って言ってんだ」
そういうところも好き、と微笑み、サラダのトマトを食べる。
「シャンの、そうやって真っ直ぐに言葉にできるのは、素敵だと思う」
「そうか?偶に『空気読め』って怒られるけどな」
ベックとかルゥとか、と笑う。
「それは、確かに」「ひでぇ」
ケタケタと笑う顔は、上機嫌そうだ。
✜
「ジウ、風呂沸かすか?」
シャンクスが浴室を指差す。
キッチンで洗い物と片付けをしていたジウは、おねがーい、と言って落ちてきた袖を頬でたくし上げる。
隣に並んだ姿を見上げると、浅灼けた手で袖を捲くりあげてくれる。
「ありがとう」
「なんなりとお申し付けを」
恭しく胸に手を当ててお辞儀したシャンクスが上目に見上げて、小さく舌を出す。
クスクスと二人で笑い合う。
軽くジウの頭を引き寄せると、少し屈んで頬にキスをした。