第24章 かわいいひと
着苦しいスラックスを脱ぎ、クローゼットを開く。
チラ、と目が向くのは、ジウの下着が仕舞われた棚。
(あれから見てねぇな)
可愛かったのに、とセクシーな下着を思い出すと、下腹部がズク、とした。
「シャン〜」
キッチンからの声に応え、トレーナーパンツを履く。
「なんだ?」
ワイシャツを脱いで綿シャツを着込みながらリビングに行くと、どっち?とジウが両手に持つのは缶ビールとシャンパングラス。
食卓に並ぶ魚介と野菜のフライに、缶ビールを取る。
「ご飯欲しくなったら言ってね」
向かいに座ったジウに頷いて缶を開ける。
「お疲れ様です」「ジウもな」
ミネラルウォーターのグラスに軽く缶をぶつけて一口飲む。
「っふはぁ」
「そっちは酒じゃないだろ」
笑いながらジウ手製のタルタルソースが入ったココットを手に取る。
「今日、トラブルあって走り回ってたのー」
「事務屋も大変だな」
内心、焦りながらも笑顔で対応をこなすジウを思い描き、笑う。
「エレベータにいたずらされるし、公共施設だよっ⁉何考えてるんだか」
もう、といたずら犯に怒っている。
「いたずらって?」
「くだんないのっ!エロ本?って言うの?グラビア紙?とりあえずそのへんの切り抜きをエレベータの鏡に貼り付けられててっ!バカなのっ?暇なのっ⁉剥がすまでエレベータ止めなきゃだし、無駄にしっかり貼ってあって!」
ぷりぷり怒っているジウに、そりゃ大変だったなぁ、とメインのエビフライにタルタルをたっぷりとつける。
「ほんっと、くだらなさ過ぎてっ」
必死こいて剥がしたわ、と付け合せのキャベツを頬張るジウ。
エビフライに齧りつくと、つけすぎたタルタルソースが溢れ、舌で拭う。
「まだ付いてるよ」「うん?」
こっち、と手を伸ばしたジウが指で拭ってくれる。
「ふふっ」
笑ったジウに、どうした?と聞く。
「なんか、シャンの食べっぷり見てたらどうでも良くなっちゃった」
美味しそうに食べてくれるから、と白身のフライを切り分けるジウに、そうか?と首を傾げた。
「『うまそうに飲む』とはよく言われるが」
「そうね。お酒も、すごく美味しそうに飲む」
ニコッと笑う瞳と見つめ合う。