• テキストサイズ

依々恋々 -Another story-

第22章 Message



徒歩で帰宅していると、見慣れた赤い髪を見つけた。
隣に立つ、スーツが似合うウェーブヘアの女性が持つタブレットを指している。

少し笑って目線を上げたシャンクスと目が合った。
(っどうしよう)
向こうも、あ、という顔をしたが、ふいっと目を逸らす。
部下だろうか。女性と反対側に立つ若い男性と話しながら、ジャケットから出した携帯を操作している。

バッグに入れていた携帯が震える。

-仕事が終わったら部屋に行く-
急ぎで打ったのだろう。いつものライオンはいない。
バッグのカードケース。クリアレッドのそれを確認する。
-シャンの部屋で待っててもいい?-
明日も仕事だが、過ごす時間の増えた彼の家に着替えはあるので問題ない。

即既読が付き、いつものライオンが顔を出す。嬉しそうにくるくると回りながら、音符と花を散らしている。

顔をあげると、彼は車寄せに停められた黒のセダンに乗り込んでいた。ドアを支える若い男性がバタリと閉める。
閉められたサイドガラスにはスモークがはられていて、彼は見えなくなってしまった。

「いってらっしゃい」
閉められたドアと窓。
聞こえるはずもないが、ポツリと零した。

  ✜

「社長、修正された稟議書です」
ヤソップが統括する技術部に突き返した稟議書に目を通す。
「やはり、ヤソップ部長には通してなかったようです」
「ヤソップには別案見せて、俺には差し替えを出してきたんだな。まあ、自分の案がどこまで通るか試したかったんだろう」
野心は認めてやろう、とセシルが持つタブレットに手を伸ばし、確認と決裁の電子印を押す。
「それで通ると思われたんじゃ、俺もだいぶ舐められてるな」
そんなことは、と首を振るセシルに少し笑う。上げた目線の先に、見逃すはずのない姿を見つけた。

「あ、」
合った目を逸らされ、声が出る。
「いかがなさいましたか?」
なんでもない、とセシルに気付かれないように隣の部下に目線を向ける。
「今日、何時に店を出られそうだ?」
「そうですね、遅くとも21時には...」
21時、とポケットから携帯を取り出し、ジウにメッセージを送る。
「その後、場所を変える予定ですが」
「断ってくれ」
開かれた車に乗り込むと、わかりました、と彼は不思議そうに頷く。
スモークの向こうのジウに、行ってくる、と呟いて微笑んだ。
/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp