• テキストサイズ

依々恋々 -Another story-

第20章 渡したくないっ!


「バックアップを!せめてバックアップを!」
「取らせると思うてかっ」

デスクを挟んでフェイントを掛け合う二人の姿は、傍から見ればお遊びだが、当人たちは本気である。

「ていうか、いつの間に録ったのよっ!変態!」
「変態で結構だっ自覚はある!」
「開き直るなっ!?」
寄越しなさい!と膠着状態で睨む。

「大体、なんでそんなもの録ってるのよ」
シャンクスは、そんなこともわからないのか、と言うような顔をする。
「貴方ほどの変態じゃないので」
「...ジウにもそれなりに変態の自覚はあると聞き受けるのは気のせいか?」
「言葉尻を掬わない」
ピシャリと言われて、くくっ、と笑う。

「そんなもの決まってるだろう。ジウと会えない時に使うんだ」
実用だ、と言って、レコーダーをポケットにしまう。
「...AVでも見なさいよ」
「んー、今更って感じなんだよな」
真面目に腕を組むシャンクスに呆れる。
「どっか冷めるっつうか、わざとらしさが気になるっつうか」
「そりゃそうでしょ。そういうものだもん」
以前、二人で行ったホテルで見たものを思い出す。

「その点、こいつは有能なんだよ」
有能ってなんだよ、とポケットを叩くシャンクスを見上げる。
「ありのままの、いつもの可愛いジウの声に加えて、不安げに俺を呼ぶ声にたまらなく唆られる」
ゾクゾクする、と解説する。
「目閉じて聞いてたら、一瞬で勃つしすぐイける」
「ちょっと待って」
真面目に説明しだす彼に、うーん、と頭を抱える。

「...定期的に再生されているという認識でいい?」
「録ったのはなんとなく、だったんだが、今じゃ過去の自分を褒めてやりたい」
「...私は、気づかなかった自分を責め立てたい」
「ジウは目隠ししてたからな」
気付くわけない、とさも完全犯罪を成し遂げたかのように言うシャンクス。
「目隠し...あっまさかそれって!」
「あっ」
いかんいかん、と口を手で覆う。
あの、あのっと口をハクハクさせるジウ。

「知らん知らん。俺はもう何も言わなーい」
ファイルもそのままに書斎を出ていくシャンクス。
逃げるな、と追いかける。
「ねぇ!まさか、『あの時』のじゃないでしょうね⁉」
「んー?『どの時』だぁ?」
「とぼけるなぁ」
捕まえたっ、と腕を掴んでレコーダーを入れたポケットに手を突っ込む。
/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp