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依々恋々 -Another story-

第20章 渡したくないっ!



「あれ?」

シャン?とキッチンから声をかけるが返事はない。
さっきまでソファにいたのに、とダイニングの方にも目を向ける。

「シャンー?」

つきっぱなしのテレビが、某社の特集を流している。
トイレをノックしてみるが不在。
寝室にもいない。

「シャン?」
最後に書斎と呼んでいる部屋を覗くと、デスクに軽く腰掛けてドッチファイルを見開いている姿。

「ん?どうした?」
「急にいなくなるんだから」
「悪い。ちょっと気になったことがあってな」
パタン、とファイルを閉じてデスクに置く。
ファイルの角が当たったのか、カシャン、と小さなものがデスクから落ちた。

「なにか落ちたよ?」
部屋に入ってデスク脇から拾い上げる。
「ボイレコ?」
仕事用だろうか?と渡そうとする前に、奪い取られた。

「ちょっと貸して」
「...別に、怪しいものは入ってない」
おかしな答えに、んん?と眉を寄せる。
「あっ、き、企業秘の、何かの記録が」
「『なんか』って何よ?明らかに『あっ』って言っちゃってるし」
しまった、と苦虫を噛んだような顔をする彼に、ずいっと手を差し出す。

「やだ!」
「っ、こどもかぁっ!?」
ギュッ、と両手で握り込んで首を振る姿に呆れる。
「なに?あっまさか私の寝言とか!?」
ヤダ、恥ずかしいから消して!とデスクを挟んだ向こうに身を乗り出す。

「おいっ、危ない!」
ペーパーナイフやペンのある机上に慌てるシャンクス。
「なら貸してっ」
「っいやだ!」
死守するのだ!と意志が見られる瞳に、ふぅん、と目を細める。

「もうキムチ炒飯作ってあげない」
「っやり方が汚いぞっ」
ジウの料理の中でも好物を出されたらこちらにカードがない、とシャンクスは唇を噛み、うーん、と唸る。
「バックアップ取ってからでもいいか?」
「消される気満々ですか」
どれだけ怪しいんだ、とため息をつき、肩を落とす。

「一体何なのよ?」
「...こえ」
「え?」
なんて?と聞き返す。
「ジウの、声...あの時の」
「どの時の?」
んー、と目を彷徨わせるシャンクスに、まさか、と口元が引き攣る。

「もしかして、それ、撮ったの寝室?」

目線をそらして、コクリ、と頷くシャンクスに襲いかかった。
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