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依々恋々 -Another story-

第16章 I dreamed of you



「ジウっ!」
いつもの笑顔で立つ姿に駆け寄ってもいつものように腕を伸ばしてくれない
「お前なら大丈夫だ」
大好きな笑顔でどうしてそんなこと言うの
「今までありがとな」

今まで?

「じゃあな」
手を振る背中に、待って、と手を伸ばす。
「シャンクスっ」
伸ばした手の先
背の高い影に寄り添う影

だれ? なぜ? どこへ? どうして?
嗚咽を零す口元を覆う手が冷たく濡れた

行かないでっ

「シャンっ」
叫んだ目線の先には、見慣れた天井。
広くもない部屋に響いた声で、呆然と眺めるのは自分の部屋。
「夢?」

夢だ、と気づき、ため息をついて布団に沈み込む。
何時だろう、と充電していた携帯を確認するとAM02:15。
嫌な時間に起きちゃったな、と再び目を閉じると、見たくもない影が蘇る。
払っても払っても消えてくれない影に、んん、と唸って寝返る。

「もうっ!」
携帯を開き、フォルダの彼の写真を眺め、再び時計を見る。
「迷惑、だよね」
メモリーを呼び出して、布団の上で膝を抱える。
(でも、会いたいよ)
夢の中で去っていった背中を思い出し、出ないで、と願いながらメッセージを打つ。
「え?」
既読がつくと同時に、着信を示す画面。慌てて繋げて耳に当てる。
「起こしちゃった?」-大丈夫-
ああ、寝てたんだ、と少し掠れた低い声に、肩を落とす。
「いやな夢を、見ちゃって...それだけだったの」
静かな電話口に、ごめんなさい、と膝の上で手を握る。

-俺も、夢を見た-
え?と電話越しの声にドキリとする。
-明日、仕事か?-
少しはっきりとした声に休み、と答えると、物音がする。
-そっちに行く-
今から?と申し訳なく思いながら、ドキリと胸が高鳴る。
「運転、気をつけてね」
-わかった-
彼が微笑んだ気配がして、ゆっくりと息を吐く。
「シャン、」-なんだ?-
「このまま、切らないで」-切らない-
少し遠くなった彼の声と、車が動き出した音がする。

-すぐに行くから-
待ってる、と彼と繋がる携帯を握りしめ、熱が逃げて冷めた布団から抜け出し、体を冷やしている彼のためにケトルでお湯を沸かし始めた。
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