第12章 CABARET
「あれよ、赤髪さんが期待した反応と違ったんでしょ」
隣で新しい酒を作る和装の女性が、そうでしょう?とシャンクスに妖艶に笑う。
「恋人ちゃんが『楽しんでおいで』って言ってくれたなら、心置きなく楽しんじゃいなさいな」
どうぞ、とコースターに置かれたグラスを手に取る。
「アンタ、ヤキモチ焼かれたかったんだろう?」
ナンバー付きの女の子を侍らしたベックマンがニヤリ、と笑う。
「赤髪さんもかわいいところあるのね」
誂うママから、ぷい、と顔を逸らすシャンクスに、女の子たちがクスクスと笑う。
「彼女さん公認なら、指名しますか?」
取引先の仕切り役の社員にすすめられたが、結構だ、と首を振った。
「結構、義理堅いんですね。きっと恋人さんはすごく素敵な方ね」
ジウと変わらない年頃の女の子に、チラ、と目線をやる。
「ああ、俺にはもったいないくらいだ」
おおー、と上がる社員の声に、いやーん素敵!と女の子たちの声が交じる。
楽しくないわけではない。場を盛り上げてくれるキレイな女の子たちと飲むのは楽しい。
それでも、つい、早く帰りたい、と考えてしまう。
「ふふ、赤髪さんがこんなにハマってるなんて。ちょっと会ってみたいわ、その子」
ボーイに氷を頼んで、ママがしっとりと笑う。
「ねぇ、ここ女の子も入店できるから、今度連れてきてよ」
会いたーい、と囃し立てる女の子たちに、首を振って煙草を咥える。
「やめとくよ。他の男に見せたくないんだ」
ママが擦ったマッチで火をつけ、紫煙を吐き出す。
「あら、ますます気になっちゃう。どんな子なの?」
どんな、と言われてキャストの女の子が寄せてくれた灰皿に灰を落とす。
「きれいな人だ」
ふっと緩んだ瞳に、REDForceの面子が笑う。
「笑うとかわいくて、性格は...素直じゃなくて、弱っちいくせに人を頼らない。自分のことは放っておけと言うくせに、人のことをよく見てる。」
「赤髪さんも、その子のことよく見てるのね」
いい顔してる、と上手に笑うママ。
「ポケットにでも入れて、いつでも連れ歩ければいいんだけどなぁ」
そういうわけにもいかん、とカラッと笑うシャンクス。
そんなドラマあったなぁ、なんていうヤソップに、女の子が知らなーい、と返す。
また騒がしくなる席は、幾度か女の子が入れ替わり、賑やかなまま時間が過ぎた。