第12章 CABARET
「え?」
ジウの部屋のカウンター越しに、やっぱだめか?と苦笑気味の顔。
「いや、だめじゃないけど...むしろ初めて確認された」
なんか変なの、とお茶を淹れるジウ。
「接待で行くだけだ。できるだけ長居はしないようにする」
湯呑を受け取って、付き合いだから、と何故か不安げなシャンクスを見上げる。
ジウの中でキャバクラは許容範囲か?
そんなことを突然言い出したものだから、どうしたのか、と冒頭の言葉しか出なかった。
「というか、むしろ今までなかったの?」
お付き合いを始めてからそろそろ季節が変わる頃。
彼の立場を考えれば、もっと頻繁に来店の機会がありそうだと思うが。
「ジウと付き合うようになってからは、なんだかんだ言い逃れてきたんだが、ちょっと今回はそうもいきそうになくてな」
どうやらお得意さんなんだろう。というか、別にそれを制限した記憶はないのだが。
「嫌じゃないのか?」「え、別に?」
へ、と驚いた顔のシャンクスに驚くジウ。
「え、だってキャバクラでしょ?別に違法ないかがわしいお店に行くわけじゃないし...それに、お仕事のお付き合いなんでしょ?」
別に趣味で通ったって止めやしないが、とカウンター越しの彼に熱いお茶を入れた湯呑を差し出す。
「そういうお店に嫌悪感はないし、常識的に程々に楽しむ程度ならなんの問題があるの?法的にアウトなお店なら、立場的に止めるけど」
程よく楽しんでおいで?と朝食と弁当の仕込みをするジウに、うん、と頷いてシャンクスはお茶を啜った。
✜
「納得がいかんっ!」
テーブルに置かれたグラスに残った氷がカラン、と崩れる。
出入り口から続く通路を挟んで、広い2つの席に渡って座るREDForceの関係者と取引先の代表や担当が、店の女の子たちと座っている。
玉座の位置に座るシャンクスに、女の子を挟んで右に座るベックマンが呆れた笑いを見せた。
「じゃあ頭は嬢ちゃんがどういう反応すれば満足したんだ?」
左角に座るヤソップが、やれやれとビールを飲む。
その中で、ひとり、不満げなシャンクスがグラスのブランデーを飲み干した。
「不満じゃないが納得できないんだよぉ!」
モヤモヤするーっ!とグラスの縁を指で叩くシャンクスに、取引先の社員たちは困ったように笑った。